学校選択というコト[01]
★私立学校と公立学校の大きな違いは、選択できるかできないかにあります。もちろん品川区が最初だったと思いますが、以来、公立学校も自治体内で選択の自由が認められているところも多くなってきました。
★しかし、選択行動ができればOKということではないですね。公立学校の場合は、理念も学習指導要領もいっしょですから、その違いはそれぞれの学校の居住地域の経済・文化格差や残念なのが手段・手法の違いで選択せざるを得ないということを意味しているということですね。「せざるを得ない」のですから「選択」とは言えません。
★まったく驚くべきなのは、「選択」が平等をぶっ壊すなんていう話を公人の方々がしても平気だという感覚です。もっとも、「選択」と言っているが、「操作的選択」だから困るんだよねと説明するのであればまあまあOKなのですが、それは自分たちのやっていることを否定するから、そうは言わない、いや言えないのですね。これではまともな議論はできません。「PISA型読解リテラシー」を!と叫んだって、OECD/PISAの3つの能力である「情報の取り出し」「解釈」「熟考と評価」のうち「熟考と評価」の能力のレベル5である批判的思考ができ、かつ一般的仮説や予測に反した考え方があることに気づくリテラシーを子供たちに継承できないではないですか。
★ですから、「選択」できるということはきわめて重要なコトなのです。「選択」には基準が必要です。モノサシとか標準とかもいいますね。もっと究極的なのは「理念」とか「イデー」とかいったものです。私立学校が「理念」を大事にしているのは、学内の教育活動で多様な判断をしなければいけない局面に出会うからです。その判断とは、意思決定であり、その決定とは「選択」判断のことなのです。
★そして学校を選ぶ時にも、その「理念」は、選択者にとってのモノサシとどのくらいズレがあるかどうか判断するモノサシでもあります。がしかし、この「理念」と学校選択者の「モノサシ」というものの両方が、実ははっきりしていないのです。
★もちろん、選択判断は、いつも論理というという知性だけで行うわけではありません。雰囲気という美学的判断で決定する時もあるでしょうし、直観的理性で決定する時もあります。つまり、知性はデータ的選択判断ですね。美学的判断は芸術的倫理的選択判断ですね。理性は超自然的選択判断です。
★偏差値や大学進学実績にこだわる学校選択者は、知性を使っているわけです。リベラルアーツの質にこだわる学校選択者は芸術的倫理的感性を使っているのです。キリスト教などのミッションスクールにこだわるのは理性をフルに使っていることになります。
★ようするに「選択」って難しい話なのですね。とりあえずしかし、そんな抽象的な話は結局わからないので、ボトムアップ的に最終的に「理念」や「モノサシ」が見えてくればよいので、具体的に見ていことがポイント。ずいぶんいろいろな私立学校について語ってきたのもそういうわけです。ホンマノオトやNetty Hot★Newsで。これからもフィールドワークはしていきますが。
★さてそのとき次のような12の項目で情報を収集し分析しています。
「12歳のための12の学校選択指標」
(1) 自己実現プログラムの自覚的実行力
(2) 教師の創造的コミュニケーション能力
(3) 時代の変化への対応力
(4) 本格的論文編集指導力
(5) プログレッシブな授業構築力
(6) 総合学習と他の教育活動の有機的結合力
(7) 現地校で耐えられる英語教育力
(8) あらゆる教育活動でのIT活用力
(9) 他教科に刺激を与える芸術教育力
(10) キャリア・デザインとしての進路指導力
(11) 生徒の潜在能力を引き出す教育空間デザイン力
(12) 説明会の表現力(教育理念の具体的展開のプレゼン)
★そしてこれをもとに図のようなマトリックスを作って、学校選択の4つのカテゴリーを仮説としてつくっています。今までは、横軸は「偏差値」を使っていたのですが、ここは「大学進学実績」だったり、「留学人数割合」だったり、「コンテスト参加度」だったり・・・もっと多次元クロス集計ができるはずです。
★今やりたいのは、入試問題の質のスコア化ですね。20年程前に灘の日置先生にお会いした時、「入試問題は学校の顔」と教えていただきました。桐朋女子もそのことを思いきり提唱しているし、なんといっても「受験の神様」の菅原道子先生がそうテレビ放送で全国に発信してしまったのですから、やらざるを得ないでしょう。それに読売新聞の「教育ルネサンス」でも「テストを生かす」という特集(参考→読売新聞の鋭い視点)を組んでいるし。とはいえ、ゆっくりやっていきたいと思います。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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