学校選択というコト[03]
★学校選択というコト[02]のつづきです。前回は、(1)の「 自己実現プログラムの自覚的実行力」について、[図COS]や[図CTL]を使いながら考えてみました。もう少し具体的に学校についてみてみましょう。
★かつてもう1つのブログ「教育のヒント」12の学校選択指標【2】(2006年4月29日)で、こう書きました。
桜蔭や雙葉などは、ある程度放任していても、生徒たち自身が、自己解決していく力を持っている。在校生は、伝統とOGの活躍に大いに影響を受けながら、成長していくのである。だから学校当局はこれという特別な自己実現プログラムを用意する必要はない。一方女子学院は礼拝を中心に、自分探しの文集や平和についての物語編集など総合的な自己実現プログラムが先生方の自覚のもとでなされている。麻布も「論集」という場で、すべての教科で自己を振り返る思索のチャンスを設定している。
★ここで例として挙げている4つの学校は、いわゆる御三家と呼ばれている学校です。偏差値からみると、いずれも相当高いレンジにいます。しかし、自己実現プログラムを自覚的に実行しているかというとことになると、違いが見えてきますね。
★[図COS]を使って差異を考えてみると、桜蔭の場合は、「記憶DB」はものすごく合理的かつ大量に成長すると思います。あるテレビ番組で、菊川怜さんの人の話をほぼ100%スキャンしているように聞いている様子を見て、すごい集中力と記憶力だと感じいったことを憶えています。外部記憶媒体の「知のデータベース」の整理法も頭抜けているはずです。しかし、桜蔭当局が、これらのDBを育成するプログラムを自覚的につくっているわけではないでしょう。
★また「自己参照基準」も個々の生徒に任せ、「勤勉 ・温雅 ・聡明であれ。責任を重んじ、礼儀を厚くし、よき社会人であれ。桜蔭学園の生徒として、礼儀正しい事と勤勉な事を誇りと致しましょう。常に親和協力して、心身共に健全な人となりましょう。.常に自主の精神をもって行動し、学園の充実発展に努めましょう。常に環境の美化に努め、清楚で質素な服装を致しましょう。」という桜蔭の教育理念を掲げれば、生徒たちはそれを個々の「自己参照基準」の中に取り入れ、自己判断がつくと思われているのではないでしょうか。だから、特別な自己実現プログラムは必要ないのだと思います。
★雙葉も同じような事情だと思いますが、少し違うのは「自己参照基準」の取扱です。雙葉の教育理念は聖書ですから、カトリックプログラムが存在します。しかし、このプログラムは学校全体で意識されているわけではなく、おそらくシスターの中だけで、一般の教師はそれを自覚的にとらえかえすことはないと思います。
★女子学院は、状況は相当違います。礼拝の運営は生徒も巻き込むプログラムとして可視化されています。DBに関しても図書館司書教諭が調べ方、論文の書き方などのプログラムを作り、教科の先生方と横断的に活動しているわけです。「自己参照基準」に関しては、礼拝の中で聖書の文言を読んだり、聞いたりするだけではなく、聖書の精神について、自分なりに自問自答し、互いに表現し合うというプログラムがあります。生徒1人ひとりのコミュニケーションのオープン・システムが全体として成長する環境を学校自身が創意工夫しているわけです。
★麻布も同様です。礼拝こそないですが、とにかくどの教科も論文作成を行い、プレゼンをし、最終的には「論集」という形にまとめられ発信されます。 [図CTL]でいけば、コミュニケーションレベルは5までいきます。女子学院もそうです。ところが、桜蔭、雙葉は、個々の生徒によってレベル5まで到達する生徒もいるのですが、学校全体で取り組むわけではないので、レベル3でとどまる可能性があります。
★自己実現プログラムが存在すれば、[図CTL]にあるように中高一貫の生活の中で、レベル5まで成長するのですが、教科重視のプログラムだとレベル2で停滞する可能性があるのです。それでも東大の入試に対応するにはなんら問題がないわけです。日本の大学受験は、チームワークも、コミュニケーションのオープン・システムも必要ありません。DBが合理的で大量であればよいのですから。ただ、桜蔭や雙葉は、生徒の資質がよいですから、放っておいてもレベル3以上には成長するでしょう。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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