名門校の条件[01]~海城の新しい人材育成
【以前、Netty Land かわら版で、「名門校の条件」を連載してきました。以前書いたものをこちらに転載し、その後新しく続けていきたいと思います。まずは、「海城学園」から始めましょう。】
§1 海城学園は三度知の最前線に立つ
★海城学園と言えば、東大・早慶上智に大量に合格者を出す一流進学校というイメージが強烈だ。最近やっと東大を超える海外名門大学に進学する日本の生徒の話題が、頭脳流出として取り上げられようになったが、海城学園はすでに海外名門大学にも多くの進学者を出している。
★しかし、海城学園は、創設当時から社会に貢献する真のエリートを育成することを教育理念としてきた。東大を頂点とする大学人エリートを育成することを本分としてきたわけではない。
★戦前は日本国家が世界の列強国とどう対等に渡り合っていけるのか、一国独立して世界のリーダーになるための日本の使命を担う人材育成のために「海軍予備校」から出発した。このことが歴史的にどのように評価されるかは別として、当時の軍事技術と才能において知の最前線に身をおいていたのは確かだ。
★戦後から89年冷戦が終焉するまでは、世界の恒久平和を願う敗戦国日本は、もの作り国家としての知を重視してきた。そのため、海城学園は理数系の知の最前線に立てる人材を育成。そのことが結果的に東大・早慶上智大量合格につながったが、決して受験第一主義路線をとったのではない。
★しかし、高度経済成長を経由してジャパン・アズ・ナンバーワンともてはやされた日本社会は、権力者とエリートと知識人の区別もできなくなり、すべては学力エリートと同義であるという共同幻想に侵されてしまった。
★これが俗に言う「大きな物語(公共的正義や自由)が消失し、個人的な損得勘定に支えられる画一的個性」の出現。日本社会はお金以外で世界のリーダーシップを発揮することができなくなり、1990年以降は、その経済力もかつてほどではなくなった。
★日本社会に楽観的な不安が浮遊。そこで海城学園のミーム(文化遺伝子)は再び活発に動き出した。グローバリゼーションという大海原で羅針盤を失った日本社会を導く真のリーダーの育成。そして、決して栄誉ある孤立としての独立ではなく、世界中の国々とコラボレーションできる自律した日本社会の改革的なリーダー、つまり「新しい紳士」を育成する教育プログラムの開発に着手することになった。海城学園は、三度目の新たな知の最前線に立ったのである。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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