入試問題は学校の顔[02]~桜蔭中
★入試問題は学校の顔~東海中のつづきです。「世界標準の読解リテラシー」にもとづいて、2007年の桜蔭中の国語の入試問題を分析しましょう。
*参照→「世界標準の読解力 OECD/PISAメソッド学べ」所収の岡部さんのオリジナル習熟度レベルの表(86・87ページ)
★2007年に実施された桜蔭の国語の問題は、すべて記述式で60字から250字まで多様な記述の問題が出題されています。それを聞いただけでも難しそうでしょう。実際難しいのですが、合格最低点や平均点など非公表です。しかし、だいたいの目安は算出できます。「席あ標準の読解リテラシー」の「習熟度レベル」でシミュレーションすると、(すべての受験生が受けたとしたら)その平均正答率は、58.4%になりますから、合格者の平均正答率はもう少し上がるでしょうね。
★まず読解リテラシーの能力の分析です。「知識問題」は4つで、あとはすべて読解リテラシーの問題で、解答形式はすべて記述式。さて、3つの能力「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」ですが、バランスよく出題されています。つまり桜蔭中の入試問題を学びの素材とすると、「世界標準の読解リテラシー」が身につくわけです。
★レベルですが、漢字を除いて、すべてレベル3以上です。「テキストの解釈」と「熟考と評価」ではレベル6の問題が1問ずつ出題されています。「テキストの解釈」のレベル6の問題というのは「細部の情報の背景全体の流れを理解したり、その流れに新しい情報を付け加えることができる」能力を必要とします。「熟考と評価」のレベル6の問題というは「批判的な評価、仮説、特殊な知識を使って、新しい考え方や見方を組み立て、かつ検証できる」能力を必要とします。
★この2つのレベル6の問題は、いずれも5500字程度の物語に関する問題です。しかも、この物語の問題は、この2つの問いしか出題されていないのですから、いかに本質的問題であるかということを推察するのは難しくないでしょう。これははっきりいって、キャラとキャラクターの自己分裂を乗り越えていく成長物語ですが、なかなか深刻な物語です。純粋で無欲な人間の根源的な存在に気づくと世間からは気にかけられなくなる、存在を無視されるという解釈も成り立ってしまう物語です。まっ、深読みなのかと思っていたら、桜蔭当局が作成した解答も、そこを避けていませんから、おもしろいですね。
★愛とか人間の存在とかを考える力は、小学生には必要がないはずがないのですね。というより小さな命をさずかったときから、周りも本人も、それが最も重要です。小学生にそんなことを考えることを要求するのは間違っていると感じたとしたら、そこは議論の余地ありですね。
★それからレベル6というのはOECD/PISAでは設定されていません。PISAで設定しているのはレベル5までです。桜蔭中の問題は世界標準を超えたところまで要求しているのです。日本の学力が低下したとか議論をする前に、もっと日本の教育事情をリサーチすべきですね、学識者たちは。科学的探究心なき教育関係者の言説は、大いに問題ありです。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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