名門校の条件[06]~白梅学園清修が名門校になる可能性あり
★名門校の条件[05]~新設中学が名門校になる可能性のつづきです。歴史性があれば物理的な歴史時間が短くても名門校になる可能性があるという話をしてきました。実際に2年前に中学を新設した白梅学園清修についてそれがあてはまるかどうか考えてみましょう。
★駒場東邦の場合、理数系という概念に対するパラダイムの転換という歴史的衝撃を世の中に与えたという意味で歴史性があるということでした。白梅学園清修の場合は、まずは部活がないという意味でこれは衝撃的です。また校則がないという点でも衝撃的です。
★実はすでにある習慣や文化としてのルール(ラング)に頼って教育を組み立てていくのではなく、はじめから白梅学園清修としての文化や規範を創造しようというところから出発しています。ですから秋田校長の日々の生徒と教師に対する目配り・気配りは通常の学校に比べればたいへんきめ細かいのです。
★一般の学校の校長としてはやり過ぎじゃないかと思われるほど配慮がいきとどいているので、普通なら生徒たちから煙たがられるでしょう。ところがそれほどないのです。というのも1期生、2期生とも自ら伝統を創っていくのだという自負を持っているため、伝統を創出するために自分たちも細かいことについて議論し、実践していかねばならないからです。普通の学校の放課後にあたる時間は、セルフラーンニングタイムです。そのための教室をどう決めるか、気分転換のためにローテーションをかけるとか、おやつはどうするかとか、すべては清修ルールのための活動なのです。
★このようなきめ細かい豊穣なコミュニケーション(パロール)が、清修ルールを作っていくのです。まずは記号表現の外示と内示が生まれ、それからやっと記号内容の外示と内示が生まれてくるのです。白梅学園清修が駒場東邦と大きく違うところは、記号内容の外示と内示の見える化にチャレンジしているところです。(このロラン・バルト的説明は前回の名門校の条件[05]~新設中学が名門校になる可能性を参照してください。)
★英語の場合は、それはすでに明らかになっています。ボキャブラリーや英文による読書のレベル分けがグローバルスタンダードによって組み立てられているので、生徒自らが振り返り自立した学習を行っています。記号表現としての自分の英語学習が、記号内容が明らかになっていることによって、海外のレベルに自分がつながっているかどうかまで理解できるのです。
★この間社会科の畔上先生からお話を聞いたのですが、なかなかすごい構想でした。グラフィカシー(画像読解リテラシーとでも言いましょうか)の授業への導入計画です。画像をプロジェクターで見せながら授業を進めているので、わかりやすいし、生徒も興味と関心をもちやすい。それで大変人気のある先生なのですが、画像という記号表現(シニフィアン)は、記号表現と記号内容の間にどのようなルールがあるのかあらかじめわからなくてもある程度予想をつけやすいので、表現と内容の結びつきの窮屈さを回避できます。
★昔ながらの言語という記号だけに頼る授業は、しかも話し合いを挿入するのであれば問題はある程度回避されるのですが、一方通行的な講義の場合は、記号表現と記号内容のパラダイムやルールを生徒に強制するために、生徒たちは言葉のおもしろさを忘却します。
★それでは知的好奇心などはふくらむはずがありませんね。畔上先生は、まずは知的好奇心の芽を伸ばそうという新しい授業の方法論に挑んでいるのです。人気があるのは当然ですね。
★このような白梅学園清修の試みを目に見える形にして外示しているのが、柴田教頭による「清修だより~緑浄春深」です。清修のサイトには「TOPICS」があります。ここには、学園の行事の様子が描かれています。これは学園の記号表現ですね。そして更新される事実のタイトルが、記号表現の外示(デノテーション)です。またタイトルの記事が内示(コノテーション)です。たいていの学校はここの段階で終わります。それでも力を入れている方です。
★しかし、清修はそれでは終わりません。柴田教頭による「清修だより~緑浄春深」が毎日のように更新されています。これこそが清修の記号内容です。しかし、まだ清修ルールや習慣(ハビトゥス)ができていないため、柴田教頭は、常に生徒と教師となんといっても保護者とずーっと語り合っています。この語り(パロール)が現在の清修を支えている仮設的清修ルール(プレ・ラング)です。タイトルはとりあえず外示(デノテーション)です。タイトルの説明はとりあえずは内示(コノテーション)です。しかし、草創期のパトスの塊です。やがてこれは理屈に転換するのでしょう。そのとき、白梅学園清修は名門校の仲間入りをするはずです。そして、清修ルールの上で日々の対話(パロール)が続けば名門校としてサバイバルできるでしょう。もしこのパロールがなくなれば、伝統校としてはサバイバルできるでしょう。秋田校長先生、柴田教頭先生は、名門校としての清修の未来を望んでいます。もちろん教職員もそして何より生徒たちと保護者の方々も。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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