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質の高い生徒が欲しいというコト

★私立中高一貫校にとって、生徒募集がうまくいくかいかないかは、まず第一に経営の問題です。定員割れを起こさないように、私立学校の先生方は様々なプロモーションの工夫をしています。オープンキャンパスでおもしろくためになる授業や行事をPRしたり、ホームページで学校の様子がわかるように毎日更新をしたりと。

★その中で、やはり大学進学実績がよいと、プロモーション活動は有利になるのですね。大学進学実績をさらにアップさせますというのは本意ではないけれども、言わざるを得ないし、そのためには実績を証明するべく進路指導を強化する必要があります。がしかし、同時に入学してくる段階で質の高い生徒が入ってくるためにはどうしたらよいのかということも問題になります。

★かつて、ある学校の理事長は、できない生徒はずっとできないし、できる生徒はそのままできる。できない生徒が入ってきて、その生徒が伸びるなどということはまずないと断言されたとき、それをどのように理解すればよいのか面食らったことを覚えています。その理事長の教育プログラムは非常にすぐれているのを知っていたからなおさらです。

★つまりできる生徒はできるが、できない生徒はできないままだというのなら、教育プログラムなどいらないことになるからですね。ところがです。自分の経験を振り返ってみると、ななんとその理事長の言っていることは、ある意味真理なんですね。

★たとえば、ある教室にたまたま訪れたとき、読解問題で質問を受けました。対話ができる生徒でした。君がこのパラグラフで問いを作るとしたらどんな問いを作るのと聞いたところ、この比喩の部分を説明してほしいなあというのはどうでしょうと。ふーんなるほどね。どうしてそれを問うの?ときくと、だって解答の手がかりが直接文章の中に書かれていないから、考えなきゃいけないでしょうと。その生徒は麻布に入りました。たった一度会っただけです。

★その生徒はしかし、偏差値は60なかったのですね。それで教室の責任者がちょっと声かけてみてくれませんかと実はセッティングしくれたのです。少し話してみたんです。しかし、この生徒はできる。なぜ偏差値が高くならないのか。おかしいと思いました。で、やはりこの生徒はできる子だったのです。

★理事長が言っているできる生徒とは偏差値の高い生徒ではなく、本当にできる生徒のことを言っているんですね。しかし、そんなことを言ったら、だれだって潜在的にはできる生徒ばかりでしょう。

★結局、できる生徒とは、偏差値などが伸びないような壁を自分で破れる資質を持った子ということになるのです。こだわりやかたくながあると伸びません。素直でやる気のある生徒が伸びるのですね。柔軟ともいいますかね。まさかと思うかもしれません。しかし、やはりできる生徒や出来るヤツというのは、確認のための問いをあまり立てませんね。そんなのは自分で調べればよいわけですから。ではどういうコミュニケーションをとるかというと、創造的な思考につながるような対話をします。創造はこだわりを捨てるところから始まります。

★偏差値が高くても、そこから先、創造的コミュニケーションをやめた場合、偏差値はそこで止まります。ところが、偏差値が低くても、創造的なコミュニケーションをとっていると、なぜか偏差値はあがります。もともとそういう能力があったのですが、発揮されていなかっただけです。

★だから偏差値が低くても創造的コミュニケーションができる生徒はできる生徒なのです。偏差値が高くても、伸び悩んでいる生徒は、どこかで創造的コミュニケーションを止めてしまった生徒です。

★質の高い生徒が欲しいと多くの学校の先生は言いますが、それは偏差値の高い生徒が欲しいと言っているのではないのですね。柔軟で創造的コミュニケーションができる資質があればそれでよいのです。

★この間も知人の子どもが国語が苦手であるというので、ちょっと会いにいきました。するとなんとなんと私とたのしげに話してくれるではないですか。その様子は創造的という以外に言いようがないものでした。偏差値に反映されていないだけで、十分にできる生徒だと実感しました。トレーニングQ&Aを3時間ぐらいしたでしょうか。読解は算数よりやさしい論理。直観がまず必要ないということがわかったと。もともと理解できる生徒です。ただそれが今まで読解とは得体の知れないものだと思い込んでいたのですね。偏差値は47から56にアップしました。しかし、この表現は正確ではありません。自分の力がやっと偏差値に反映するようになったという言い方が正解でしょう。

★ただ、トレーニングQ&Aの対話がポイントです。ここは誰も気にも止めません。何かスキルや方法論というものは目に見える何かだと思っているようです。わかりやすく道具化されていなければならないのですね。だからいくらトレーニングQ&Aの話をしても、なぜそれがすごいのかわからないのです。Honda「発見・体験学習」にもそれを埋め込んできましたが、結局伝わらず。、マニュアル化が進みました。マニュアル化は創造性をストップさせます。書籍編集のアドバイスもしました。するとそれは塾のスキルだし、くどくなるからはずしましょうということになりました。えっ、ハイデガーとトマス・アクィナスの対話何だがなあ。だいたい私のことを国語の講師だとレッテル貼りし、そのこだわりから抜けられない人たちとの創造なき対話は疲れますね。

★とにかくとにかく、OECD/PISAもそのQ&Aの創造性につては、明らかにされていません。だからPISA型世界標準と日本では騒いでいますが、だれも真意を汲んでいません。こりゃまた形だけ移植される。いつの世も幸せの青い鳥なのですね。

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