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学習指導要領を世界標準に

★今回の43年ぶりに行われた全国学力テストはその中途半端ぶりを批判されています。OECD/PISAなどの世界標準テストの読解リテラシーなどで、日本のランキングが下がったということもあり、PISA型テストとも呼ばれているほどです。

★しかし、それはまったく違うことに気づきました。というのもまず中途半端な原因は、学習指導要領そのものにあったからです。たとえば、読解リテラシーにおいて、PISAは3つの能力領域を想定しています。「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」がそれです。この3つの能力領域を大事にしようというのは文科省の動きでもあります。

全国学力テストを「世界標準の読解力 OECD/PISAに学べ」(白日社)の著書岡部憲治さんといっしょに分析してみましたが、3つの能力領域に関しては、なんとか意識して出題されているようです。しかし、習熟度レベルとなると、レベル4や5の問題は少ないのです。小学校6年の方ではレベル5の問題は出題されていません。また中学の方はレベル5の問題は1題だけしか出題されていません。

Photo_4 ★このようなテスト設計でよいのか?と思いますが、文科省としては全く問題ないのです。なぜかというと、全国学力テストの設計基準は学習指導要領だからです。ところがです。学習指導要領の習熟度レベルを分析してみると、中学まで学んでも、OECD/PISAの設定する世界標準の習熟度レベルに到達しないのです。表を参照してください。これでは国際ランキングは下がるはずです。

★一方中学入試は、世界標準のレベル5を超える問題が出題されています。岡部さんはそれをレベル6として独自に設定しました。公立と私立の差は学びに対するコンセプトの違いであり、経済的な格差にポイントがあったわけではなかったのです。

★習熟度レベルというと、多くの人は、レベルがあがると難しくなる。そんな難しいレベルを小学校の時や中学校の時にやってよいのかと思われるでしょう。いや違うのです。易しい問題でも、思考のレベルは包括的です。ここまででよいということはありません。

★小学生でも中学生でも大人でも、読解リテラシーのレベルは最低5まで必要なのです。レベルの制限は、思考の制限でもあります。レベルというからややこしくなるのかもしれません。ステージとかプロセスとか言った方がよいかもしれません。

★知の9歳の壁は、なんと文科省自らが形成していたのです。これは問題です。民主主義では言論の自由が保障されていないと困るわけです。小学校でも民主主義は学ぶわけです。しかし、読解リテラシーのレベルが制限されています。レベル4や5に進まねば、批判的な思考ができません。これでは議論ができないわけですね。

★議論、つまりディスカッションの自由こそ言論・表現の自由です。J.S.ミルの言論の自由の「言論」に相当する語は、原文ではディスカッションです。今、中教審は学習指導要領を見直しているそうですが、授業時間の見直しではなく、世界標準の民主主義のためのモノサシに合わせて最適な再構築をしていただきたいですね。[本間 勇人 Gate of Honma Note

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