成長し続ける学校力[01]~八雲学園
★八雲学園の先生方とお会いしました。同学園が中学を再開して中高一貫校として出発したのが11年前の1996年。私が私立学校のリサーチを本格的に開始したのも11年前です。私立学校について何をどう学べばよいかわからないときに、新しい中高一貫校が、どのように教育や学校経営を組み立てていくのか、学ぶチャンスをいただきました。そのとき以来、ずっと八雲学園の成長を形作ってきた先生方のお話を聞くことができたのです。
★八雲学園の理事長・校長近藤先生は、東京私立中学校高等学校協会の会長でもあります。したがって、私学の存在意義について、自治体や文科省、マスコミに説明し続けるために、日本中を(アメリカにも行きますから世界中ですね)奔走しています。しかし、ご自分の学園の生徒・保護者・教師と対話し続けることも大切にしています。
★ですから近藤校長先生を内側からしっかり支える先生方のパワーも相当強くなければならないのですが、八雲学園の昨今の大飛躍の秘密は、何といっても、この先生方の一丸となって何にでもぶつかっていく強力なチーム力です。
★リーダーも強く、チームメンバー1人ひとりも強い。そしてその親和力こそが八雲学園が成長し続けるエネルギーなのですね。
★チームワークに欠かせないのは、やはりコミュニケーションです。近藤校長先生は、政財界人と情報交換してくるし、先生方は他校の現場の先生方や教育関係者と情報交換してきます。そして、受発信してきた情報の共有を学校でしているのです。
★ですから、お会いした先生方との話題は、多岐にわたり、示唆に富んでいるわけです。日本の教育の悩みどころを、アメリカの教育事情と比較しながら展開していく話は実に面白いのですが、もっとおもしろいのは、その悩みどころの解決を、八雲学園の教育実践の中で行っているところです。
★考えてみれば、チューター制などは、24時間体制で先生方と対話ができるシステムです。コミュニケーションという生徒にとってライフラインがあるのは、時代の苦悩や叫びを受け入れる寛容性の実行です。この制度をすべての先生方がいっしょに取り組むのは、他校では難しいでしょう。労務規定だとか、教育の論理と経営の論理は別だとか、契約上の問題が壁になるからです。
★八雲学園も、もちろん契約というのはあります。しかし、アメリカの本物の教育(アメリカはあまりに多様で十把一絡げにはできませんが)を知っている先生方は、その契約はcontractではなくcovenantであることを知っています。相互契約ではあるのですが、それ以前に教育への奉仕であるという約束をしているという意味での契約であることを。
★また、グローバリゼーションの波を避けるわけにはいかない日本の政治経済。教育も世界で活躍するクリエイティブな人材を輩出しなければなりません。それには英語で考える人材がポイントです。EUもBRICsも、本当に英語をつかう人材は当り前のように増えています。シンガポールの中高生は完璧に英語で議論ができるわけです。
★お会いした先生方は、数学と社会の教師でしたが、海外研修に生徒たちといっしょにアメリカにいくので、当然自分たちも英語を使うわけです。近藤校長先生も生徒たちにエールをおくるためにしばしば単身アメリカにわたります。
★八雲学園の英語教育は、教科を超えているし、受験英語を超えています。教師も生徒も保護者も英語をいろいろな場面でインタフェースするのです。このこと自体世界標準だし、時代をしっかり読んでいるわけです。
★成長し続ける学校力とは、フラットなコミュニケーション力と時代認識のための情報分析力、そして何といってもメンバーの親和力です。喧々諤々議論をするけれど、決まったらすぐに実行する雰囲気。この雰囲気を大事にしているのが八雲学園ですね。トルネードのように急成長した八雲学園。ここで少し安定期にはいり、次の時代のために充電したいという気持ちもあるようですが、完全に安定してしまうと、組織というのはやがて衰退期を迎えるものです。ですから安定期にも親和的なゆさぶりが必要だと。それを先生方は「f分の1のゆらぎ」というメタファーで語ってくれました。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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