キャラ化するニッポンを読解する[04]
★キャラ化するニッポンを読解する[03]のつづきです。「キャラ化」現象は、大きな物語が喪失したときに、日本中に広まります。大きな物語の喪失は、1989年のベルリンの壁崩壊に象徴される社会主義国の資本主義化が始まったときからやってきます。日本はそのあとすぐにバブル経済が崩壊していますね。そこから経済の空白という10年が続きますが、脳科学が一方では進みます。世界はグローバリゼーションの嵐が吹きます。ヨーロッパはEU革命、BRICsは世界経済をゆさぶります。忘れてならないのは21世紀に表面的には崩壊しましたが実際には定着しているIT経済も世界をかけめぐっていますね。
★日本の経済神話、経済の空洞化と「キャラ化」現象は関係があるかもしれません。したがって、89年前はおそらく「キャラ」というキーワードはそれほどでまわっていなかったでしょう。使われたとしても「キャラクター」の略語ぐらいのイメージで、今のように「キャラクター」というキーワードと別の言葉であるような扱いは受けていなかったと思います。
★相原さんも「キャラ」という言葉と「キャラクター」は、今では違うけれども、89年以前は「キャラクター」という言葉がまず浸透する時代だったと、「キャラ」前史を簡単に見通しています。
★「キャラクター」という概念は、日本においては戦後復興すぐに生まれたとしています。そして以下のように経緯を挙げていきます。
1946年「マンガの神様」手塚治虫デビュー。40年代後半には「冒険王」「少年クラブ」が大人気。
1950年にはディズニーアニメ「白雪姫」が公開。不二家のペコちゃん、佐藤製薬のサトちゃん、エスエス製薬のピョンちゃんなど企業キャラクターも続々登場。
1959年「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」が創刊。
1960年代「月光仮面」「鉄人28号」などテレビキャラクターが人気。1963年にアニメ化された「鉄腕アトム」は空前の視聴率。
60年代後半「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「巨人の星」「タイガーマスク」「魔法使いサリー」「ひみつのアッコちゃん」など人気テレビアニメ続々登場。
1974年に「ハローキティ」誕生。1977年に「宇宙戦艦ヤマト」劇場公開。同じころ「機動戦士ガンダム」。
1983年「東京ディズニランド」オープン。任天堂から「ファミコン」が発売。そして88年から89年に宮崎勤「連続幼女誘拐殺人事件」発生。オタクバッシングが猛威を奮う。
★ベルリンの壁崩壊前夜に、「キャラクター」文化の光と影の話題が頂点に達します。そしてその光と影の背景の大きな物語が喪失すると同時に「キャラ化」現象が生まれるのです。
★「キャラクター」はまだ大きな物語を完全にには切り離していません。というのもバンダイキャラクター研究所で、キャラクターが提供する精神的効能を調査して、8つに分類しているのですが、それらは大きな物語からのストレスからいかにして自己防衛するかという範囲内にあるものばかりだからです。8つの分類を見てみましょう。
①やすらぎ
②庇護
③現実逃避
④幼年回帰
⑤存在確認
⑥変身願望
⑦元気・活力
⑧気分転換
★これらは、みな大きな物語に帰還するためのすべて気分転換の表現です。何かに似ているでしょう。そうですね。フロイトの転移ですね。「キャラクター」が治療者の代理を果たしているわけです。
★この「キャラクター」戦略は、日本独自のものではなく、実は戦後復興と称してアメリカ文化から学んだものです。まんがは日本にも昔からある文化ですが、それをキャラクター化したのはアメリカ文化です。というよりアメリカ資本主義のプロモーション戦略の一環でしょう。その代表的なものがディズニーで、「まんがの神様」手塚治虫もそこから学んでいるらしいのですね。
★前回軽井沢について少し話しましたが、この話は明治時代からの話です。軽井沢にはすでにアメリカ資本主義を操作する富裕層の思想とそれに対峙する私立学校の思想があったわけですが、このどちらでもない文化の孵化装置が「キャラクター」文化だったという話になるのでしょう。相原さんの考えから少しズレたかもしれません。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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