入試問題は学校の顔[05]~鴎友学園女子
★入試問題は学校の顔[04]~かえつ有明のつづきです。前々から気になっていた鴎友女子学園の国語の問題。解き味がほかの学校と比較してかなり違うんですね。長文で記述式がほとんどですから設問が少ないわけです。というと、麻布、開成、武蔵、桜蔭の国語の入試問題スタイルの仲間にはいるわけです。しかし、どこか違うのです。もちろん、もっとも多い模擬試験に近いオーソドックスなスタイルとは全く違います。
★細部をきちんと読んでいくのはあたりまえだけれど、設問がそこを細かくついてくることはしませんね。かといって全体の構造をしっかり考えて解答するというわけでもないのです。テーマがわかるとスーッと了解できる、そんな不思議なタイプですね。
★2007年の物語は、サンタクロースの存在をどのようにとらえるようになるかで、成長の段階が急に変わるというストーリーのものが出題されています。サンタクロースの存在認識が、プレゼントをもらう側になるのか与える側になるのか、その境界線をめぐる話なんですが、これはもらう側とは人に愛される幼年期を象徴し、与える側は人を愛する立場に立つ大人に成長する象徴なんですね。
★論説文は、経済発展と自然保護の矛盾をどう考えるかというのがテーマです。両者をべつものとしてとらえるのではなく、自然保護の延長線上に経済発展を考えていく視点がポイントですが、かなり高い見識を持っていなければ、実際には解答に窮するでしょう。
★両方とも鴎友学園女子の教育プログラムの重要なテーマです。まさに入試問題は学校の顔です。ところで、いつものようにOESD/PISAの読解リテラシーのモノサシで分析してみました。やはり「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」のバランスはよく考えられています。
★一方、レベル分析の結果は、世界標準レベルで、世界標準のレベル5を超えるレベル6までのものは出題されていませんでした。これが、一般の入試問題に比べ、格が違うなと感じる一方で、麻布や桜蔭が出題するような問題とも違うなと感じる理由なのだと思います。中学入試の段階では、世界標準の最高レベルの出題で十分でしょう。このモノサシで合格者の全体平均正答率をシミュレーションすると60.8%になります。実際の結果ともそれほどズレはないはずですから、やはり、よく練られた最適の問題ですね。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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