教育の挑戦[06] 聖園女学院(6)
★教育の挑戦[05] 聖園女学院(5)のつづきです。聖園女学院の入試問題をいただいたので、分析してみました。入試問題は学校の顔です。学校の教育理念やシラバスなどのエッセンスがきちんと表現されている優れた問題が創られる場合があります。そのような入試問題を作成できる学校は、やはり教育とそれを形成している教師の質が良いわけです。
★聖園女学院の国語の入試問題(1次A)は、まさに教育理念や教育プログラムのエッセンスがきちんと表現されているし、読解リテラシーのとらえ方も、OECD/PISAの世界標準のモノサシのレベル5を超えています。
★出題された岡部伊都子さんのエッセイは、「世界がぜんたいに幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」という宮沢賢治の言葉からはじまる文章です。なんとここでも黄金律の話がテーマなのです。もう一つ重松清さんの物語が出題されました。病気のために入院、そして転校しなければならなかったクラスメイトとの心の交わりがテーマの文章です。ここにも「関係」「信頼」「思いやり」「自分を見つめる」という黄金律に通じるテーマが見え隠れしています。一貫した教育と信念を感じないわけにはいきませんね。
★そして読解リテラシーの問いも「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」という3つの能力のバランスをみられるようにプログラムされています。中学受験を通しながらも、「受験脳」に固まらず、論理的に思考し、想像に思いをはせられる柔軟な頭脳を鍛えることができる問題が工夫されているということですね。
★また出題レベルもOECD/PISAのレベルを超えるレベル6の問題も出題され、世界標準の読解力を超える問題も出題され、生徒のチャレンジ精神に刺激を与える問いが用意されています。世界標準の読解リテラシーでシミュレーションすると、平均正答率は70.2%になります。受験者の最高点が88/100点満点で、受験者の平均が59.7点ですから、合格者の能力も世界標準に準じていると想定できます。偏差値ではどうしても「受験脳」の基準を超えることができませんから、受験勉強が人生においてどういう位置づけになるのか見えてきません。こういう世界標準のモノサシで分析してみると、聖園女学院を目指して学ぶことが世界標準を超える道につながっていること、また出題されている文章を分析することで、人間にとって大切なことを考える時間を持てることに気づきます。 [本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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