名門校の条件[11]~共立女子のクオリティ
★名門校の条件[10]~合理性と創造性を統合した桐光学園のつづきです。今回は共立女子を紹介します。共立女子の教頭渡辺眞人先生と国際教育研究家岡部憲治さんの座談会をまとめたもので、「Netty Land かわら版2007年6月号」に掲載された内容です。コーディネーター・執筆は本間でした。
★この座談会をきっかけに、お二人のコラボレーション授業のチャレンジが実現しました。私自身も「名門校の条件」を考えていく着想を得た記念すべき対話のひと時でした。かわら版ではページ数が限られていましたから、ここでは、少し補足しながらご紹介していけたらよいなと思っています。
★誰もが認める私立の「名門校」共立女子。「名門校の条件」は言うまでもなく教育の質が高いことです。しかしそれはなかなか目で見て確認できるというものではありません。その見えない共立女子の「名門校の条件」が、お二人の対話によって映し出されます。
§1 共立女子の教育の質は対話が生む
本間)学校選択の潮流では、大学進学実績や偏差値という指標以外に、教育のクオリティを判断する指標が求められています。私どももまだまだ独断と偏見ではありますが、クオリティスコアを「12の指標」から算出しています。共立女子のクオリティスコア(図は2006年版)は相当高いのですが。その理由についてお話いただけますか。
渡辺)端的に言うと「要素還元主義」から「関係総体主義」へ、「モノ」から「コト」へという視点から、6年間の教育のデザインがされているということでしょうか。生徒の数も多いし、行事も大変多いのが共立女子の大きな特徴ですが、それがバラバラに設計されていたのでは、質は生まれてこないのです。互いに違う考え方・感じ方を持った人間どうしの関係が、密になるように行事も有機的につなげる設計をする。だから質が生まれてくるのです。
本間)いきなり難しい話から始まりましたが、たしかに要素を配置するだけでは合理的で効率がよいという意味での質は生まれてきそうですが、ヒューマニティとしての質は見えてきませんね。
岡部)渡辺先生のキーワードの使い方は、戦略的なのです。共立女子の教育を従来のキーワードで語ってしまうと、伝統的で良妻賢母的な教育というイメージで捉えられかねない。しかし、共立女子の帰国生の取材をしたときに感じたのですが、かなり先を行ったデザインがされていると思います。そのために、まだ教育市場では普遍化していない新しいキーワードで語る挑戦をしていると了解できます。
本間) そのかなり先を行ったデザインとは何なのですか。
岡部)それはコミュニケーション・ベースのデザインということだと思います。校訓やカリキュラム、校則などの制度が上から作られて、生徒たちの活動が決まるのではなく、生徒どうし、生徒と教師の学園生活の中でのコミュニケーションの中から生まれてきた文化が共立女子の教育の文化や制度に結実しているということでしょうか。帰国生は、共立祭に訪れた時に接してくれた在校生の親身さ・優しさ、全体的な学校の明るい雰囲気に魅力を感じたのが最終的な学校選びにつながったと語っていましたね。
★共立女子の教育の構造は、器械モデルでも、機械モデルでもないのです。もちろん植物態モデルでもないのですね。ですから有機的という言葉だけ使ってしまうと誤解されるおそれがあるのです。それで、お二人は日常生活では使わないけれど、現代思想などの文脈では使われる「要素還元主義」とか「関係総体主義」あるいは「モノ」とか「コト」という記号表現をされているわけです。[本間 勇人 Gate of Honma Note ]
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