« Benesse力の浸透加速(2) | トップページ | 教育の挑戦[02] 聖園女学院(2) »

名門校の条件[14]~共立女子のクオリティ

名門校の条件[13]~共立女子のクオリティのつづきです。

§4 共立女子のリベラルアーツ的雰囲気

本間) 「ともだち」というのはまさに共立女子の教育の質を語る上で象徴的な作品集の1つだと思います。校訓の中にも「友愛」というキーワードがはいっていますよね。

Photo_4 渡辺) ご承知のとおり共立女子は、1886年 女性が自立し、社会人として職業に就くことを目的として、教育界の先覚者34人によって設立されたのですね。この34人は、それぞれいろいろな分野で活躍された人でした。文部官僚だけれど、今とは違って日本の教育を切り拓こうというアグレッシブな人物もいたし、女子教育の草分け的人物もいた。彼らが議論し協力して設立したわけで、まさにそこに「友愛」のミームのルーツはあるのでしょう。そしてそれがベースにあるから、欧州統合の父クーデンホーフ・カレルギー伯爵の「パン・ヨーロッパ」「友愛革命」といった思想を受け入れることができたのだと思います。
 鳩山一郎は伯爵の思想に共鳴したようです。1953年に、「友愛青年同志会」を結成し、初代会長に就任しています。この同志会は、文部科学省の所管で、財団法人「日本友愛青年協会」として今も存続しています。一郎他界後も鳩山家はクーデンホーフ・カレルギーと親交を持ち、一郎の賢夫人鳩山薫が学園長時代、伯爵を招き、共立女子で講演を開いたほどです。

岡部) クーデンホーフ・カレルギーといえば、今のEUの構想を描いた伯爵。アルザスの日本学研究所とEUプログラムをコラボしていますが、本当に国境という壁がないですね。フランクフルトからストラスブール、ストラスブールからフライブルグとドイツとフランスを行ったり来たりしますが、まさに友愛という雰囲気です。共立女子の教育の原点は、はじめから壁を作らない教育だったわけですね。

本間) 伯爵の思想のルーツはテレジアーヌム(日本でいう私立中高一貫校)時代のリベラルアーツにあると言われています。

Photo_6 岡部) 欧米の教育は、良かれ悪しかれプラトン以降の思想、特にへーゲリアン・ウェイを意識せざるを得ません。欧米で言うリベラルアーツには、こういう考え方が伝統的にありますが、ヘーゲリアン・ウェイというのは結局「関係総体主義」。共立女子の教育の質はこの欧米流儀のリベラルアーツを共有しているということだと思います。

渡辺) 共立女子の授業の特徴といえば、ソクラテス型の「問答法」です。やはり対話やコミュニケーションというのが共立女子の教育のクオリティを生成し続けているということでしょう。改めて了解することができました。

本間) コミュニケーション・ベースといっても「おしゃべり」から「議論」「プレゼン」まで次元は多層ですが、どうやらその全てが共立女子にはある。だから生徒さんたちは明るいし真剣にもなれる。共立女子の多元的なコミュニケーションのシステムについてもっとお聞きしたかったのですが、また機会を頂きたいと思います。貴重なお話を伺うことができ、心から感謝申し上げます。

Photo ★鳩山一郎は、クーデンホーフ・カレルギーの本を翻訳しています。「自由と人生」がそれで、友愛革命の書なのですね。その中にこんな箇所があります。「近代世界は、友愛的な精神とは大分に懸け離れている。それは生存競争、適者生存なる所謂ダーウィンの根本法則に署名している」と。

★麻布学園、開成、桐朋、女子学院、恵泉、鴎友学園女子、聖学院グループなどは、このダーウィニズムと対峙した私立学校です。東大初総理加藤弘之が推し進めた政策がダーヴィニズムで、それに対峙したのが聖学院の初代校長石川角次郎、内村鑑三、新渡戸稲造らです。彼らの精神的師は、江原素六、新島襄です。ところで、内村鑑三、新渡戸稲造の弟子たちは、南原繁、矢内原忠雄、河井道、三谷隆生、前田多門などでたくさんいるのです。

★南原繁、矢内原忠雄、河井道らは戦後教育基本法成立に影響を与えました。三谷隆正の姉は三谷民子。民子は初代院長矢島楫子を長く支えJGの学監を務めました。前田多門の娘があの神谷美恵子。東京帝国大学医学部精神科医局において内村鑑三の長男である内村祐之教授のもとで研究もしていました。

★要するに、脈脈と続く<私学の系譜>は、日本の官僚近代世界と対峙してきたもう一つの近代、友愛近代社会形成に貢献してきたというわけです。そして共立女子もこの友愛近代社会形成のための人材輩出の拠点であり、<私学の系譜>のメンバーなのです。 [本間 勇人 Gate of Honma Note 

|

« Benesse力の浸透加速(2) | トップページ | 教育の挑戦[02] 聖園女学院(2) »

文化・芸術」カテゴリの記事