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名門校の条件[17]~茂木健一郎氏のコンセプト

名門校の条件[16]~茂木健一郎氏のコンセプトのつづきです。「欲望する脳」を読むと、実はすぐに茂木健一郎さんのコンセプトが名門校の影響を受けていることはわかってしまうのですが、そこはいずれ明かすとして(読んだ方はすぐにわかるので、もったいぶる必要はないのですが、実はいつも言っていることなのでしつこくなります。それゆえ後回しに。)、茂木さんの言葉をみていきましょう。

現代の脳科学においては、感情は生きる上で避けられない「不確実性」に対する適応戦略として進化してきたと考えられている。(「16 近代からこぼれ落ちた感情」から)

★1990年以来の脳科学の時代にあって、この提言は重要なのです。それ以前はやはり理性の時代だったし、左脳の時代だったのです。右脳の発見はそんな昔の話ではなく、90年以降の話だったのですね。

★そういえばダニエル・ゴールマンのEQもちょうどそのころにベストセラーになっています。IQだけではなくEQの重要性は、左脳だけではなく右脳も重視した脳科学に対応するわけです。ゴールマン自身、認知心理学に脳科学の成果―特にアントニオ・ダマッシオの「感じる脳」―を取り入れ、最近では「SQ(社会的知性)」という本を出しています。

★近代からこぼれ落ちたというより、オールド・モダンからこぼれ落ちたと言った方が正確でしょう。19世紀末のもう一つの近代は、感情も大事にしましたからね。名門校の系譜はそういう意味ではオールド・モダンに与してはいなかったはずです。茂木さんはこうも語っています。

私たちは、近代からこぼれ落ちてしまった感情を、一体どうすれば良いのだろう。熱心に投資戦略を練って悦に入っている人に、私たちは思わず「ヘン!」と肘鉄砲をお見舞いしたくなるが、それは、資本市場など感情のモノカルチャーでしかないと知っているからだろう。しかし、もともと現代社会の中で許容される人間の感情の幅は、どんどん狭くなっていっている。考えてみると恐ろしい。その隘路からどうやって私たちの魂を救うかという課題は、1つには芸術の問題ではあるが、より根本的には、「不可能」や「無限」をも概念として扱える、真に偉大な科学理論の登場を期するしかないと私は考える。だからこそこうして模索している。

★「不可能」や「無限」の概念も含む科学や芸術となれば、それはますます19世紀末にルーツがありますね。それに感情が貧困になっていくことを救うのは、このような科学や芸術のベースを生み出す名門校―今では私立中高一貫校の中にそれが多いのですが―に大いに期待したいと私は考えます。 

★そうそう、茂木健一郎さんは、ここでは珍しく資本市場を目の敵にしていますが、これは金融資本のことを指しているだけです。産業資本、社会資本、クリエイティブ資本の話になると、また別のはずです。感情のモノカルチャーでは、これらの市場は活性化しないからです。資本も多重文脈資本の世の中になったのが今なのですね。科学や芸術や教育も、霞を食ってはやっていけないことはお忘れなく。   [本間 勇人 Gate of Honma Note

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