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成長し続ける学校力[07]~中村中(4)

成長し続ける学校力[06]~中村中(3)のつづきです。未来を創る「The授業」のミーティングが終わった後に、教頭の梅沢辰也先生に、お話をうかがう機会をもらいました。梅沢先生は、学内で最も遠い先を見ている学校経営陣の一人です。それでいて一歩先のこともきちんと考え、日々新たな事を生み出すクリエーターでもあります。一歩先の身近なことをおろそかにすると遠い先のビジョンにつながらないのです。

★実はこの一歩先のアイディアを生み出して遠くにジャンプするというのは、天才教育哲学者ビゴツキーの「最近接領域」を実践しているともいえます。生徒一人ひとりの一歩先が違うのですから、それを読み取りアイディアを共有する教師とはすぐれているとしかいいようがないのです。前回も書きましたが、最高級ホテルのサービスでいえば、エクストラマイルの発想にも通じます。

★ですから梅沢先生に何か新しいすてきなことが起きているでしょうから、教えてくださいというと、もちろんありますよと目を輝かせて語ってくれました。

★中村のキャリアデザインの一環として、“100”プロジェクトが実施されています。2009年に中村は創立100周年を迎えるところから発想が結実したようです。

①100分学習=努力の習慣→中1で毎日100分自宅学習。学年ごとに100分ずつ増やし、高3では毎日360分自宅学習。

②100冊ノート=知識力→中1から暗記用ノートをつくり、「100冊」達成する。

③100本表現=知識運用力→中1から年間20本小論文や作文を書き、高2で「100本」達成する。

★小論文は国語とは限らず、教科横断型です。梅沢先生は体育科ですから、心身と自然と社会のエコロジーを大切にしています。ですからおのずと生徒たちは環境をテーマに新しい切り口で小論文を書くことになったようです。

★さてここでエクストラマイルいやいや最近接領域の一歩先を読む発想がピンとくるわけです。茂木健一郎さん流儀でいえば、「アハ!体験」です。あまりに生徒たちの着眼点がおもしろかったので、環境について紙の上だけではなく、フィルドワークしてはどうだろうと一歩先の問いを投げかけると、すぐに有志が集まってプロジェクトチームができたそうです。(有志を集うというボランティア的発想も中村の伝統ですね。自学自習の姿勢はボランティアからしか生まれないはずなんですね。)

★このチームの活動プロセスと成果はどこかで発表になるでしょうから、今から楽しみですが、独断と偏見で分析させていただくと、ここにはすばらしい教育学的視点が存在しています。自宅学習と知識力と知識運用力は、自発的な体験を通してはじめて関係づけられます。関係の輪が見つかれば、どんどん知識は磁石のようにくっついてくるし、豊富な知識はあるところまでは過冷却状態で、知識のままですが、あるとき雪の結晶が瞬時にでき(つまりこれが「アハ!体験」)、いっせいに地上を美しい雪のベールが包みます。アイディアが生まれるわけですね。

★脳科学的には、体験を通して脳にインプットした知識は、レム睡眠時に、日常では見えない「補助線」によって整理されて、運用できるようになるんですね。この「補助線」は自発的体験によって5感で情報をインプットしていないと引けないのです。

★能の道でいえば、「序破急」。剣の道でいえば「序破離」。体育科ならではの発想でもありますね。

★学内全体が一丸となって新しいことに取り組む。しかし全く同じように取り組むのではなく、先生方1人ひとりがいい味を出す。創意工夫をするということです。このいい味を引き出す役目を理事長や校長、副校長、教頭、部長が果たしている。これもまた成長し続ける学校力を育てるエネルギーですね。 [本間 勇人 Gate of Honma Note

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