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私立学校の理念のタイプ[14]~京北学園の川合校長先生との対話④

★「私立学校の理念のタイプ[13]~京北学園の川合校長先生との対話③」のつづきです。川合先生は、「月刊学校教育相談」で「ワークショップ ていねいなコミュニケーション」を連載しています。「ていねいなコミュニケーション」とは何かについては、私が説明するより、みなさんが同誌を読んだほうがわかりやすいと思いますので、私は、川合先生の提言及び実践について、その重要性について引き続き述べていきたいと思います。

★川合先生がなぜ今「ていねいなコミュニケーション」が必要なのかというのか、しかもそれは日常の生活とか面談とかという場面のみならず、家庭の中や授業の中でも重要だというのはなぜか。この確認がもっとも大切だと思います。

「私立学校の理念のタイプ[12]~京北学園の川合校長先生との対話②」でも述べましたが、川合先生は、人間関係がうまくいかないのは、コミュニケーション不足だけが理由なのではなく、人間関係を悪化させるコミュニケーションというものがあると考えています。

★私もその両者のコミュニケーションを「抑圧的なコミュニケーション」と呼んで、コミュニケーションならなんでもOKだとみなすのは危険だと思っています。川合先生も人間関係を豊かにしていく「ていねいなコミュニケーション」と「人間関係を悪化させるコミュニケーション」の区別をされているわけです。いわばコミュニケーションの両義性というものの見方をしているのです。

★学校の日常の生活や面談では豊かなコミュニケーションを作っていても、家庭にもどった瞬間に人間関係を悪化させるコミュニケーションが存在していたり、同じように授業においてもそのようなコミュニケーションがあったとしたらどうでしょう。ここの領域はある意味閉じられたエリアです。何が起こっているのかわからないのですね。

★それゆえ、家庭においても授業においても「ていねいなコミュニケーション」が必要なのだということだと思います。

★川合先生は、いろいろなところで「9歳の壁」をいかにして乗り越えるかについて講演をされていますが、これも結局「ていねいなコミュニケーション」の実践と浸透によるもの以外にないということでしょう。

★ということは「人間関係を悪化させるコミュニケーション」を持続させている場合、中学生や高校生、大学生、大人であっても「9歳の壁」を乗り越えないまま成長してしまっている場合があるということではないでしょうか。これは恐ろしいですね。この点についてはじっくり考えなければなりませんが、今は「ていねいなコミュニケーション」の話にもどりましょう。

★「月刊学校教育相談2007年4月号」の「ワークショップ ていねいなコミュニケーション№1」で川合先生はこう語っています。

「学力低下」にもコミュニケーションの力が関係しそうです。「基礎学力研究開発センター」(東大21世紀COE)の秋田喜代美教授のプロジェクトチームでは、学力の定着には「学級の雰囲気、その学級のもつコミュニケーション様式が影響を与える」、また「成績の高い生徒は、新たな学校の中でも、1学期のうちに広い友人ネットワークを形成していっている」と、教師と生徒間のコミュニケーションや生徒間の人間関係が学力習得にも大きな影響があることを示唆されました(『東京大学教育学研究科紀要第43巻』2004年4月3日)。

★「ていねいなコミュニケーションは」人間関係を豊かにするだけではなく、学力形成の学習の背景としても重要だということですね。さきほどの「9歳の壁」は、学力の伸びの壁でもありますね。ということは、「ていねいなコミュニケーション」をうまくできないということは「9歳の壁」を乗り越えられない可能性があるわけですから、学力の伸びが停滞するということを意味するのかもしれません。

★以上のような川合先生のものの見方や考え方は、OECD/PISAの報告を読んでいると共通している部分がたくさんあります。特に2003年の報告の「学習の背景」のレポートには、“School and Class Climate”というフレーズがあります。日本語では「学級雰囲気」と訳されていますが、この雰囲気が学力にも影響を与えていると。

★つまり、川合先生の「ていねいなコミュニケーション」は世界標準でもあるわけで、それだけにますます重要な考え方であり同時に実践なのです。実際この「ていねいなコミュニケーション」を基礎とした「プロジェクト学習」を構築した京北学園白山高校教頭の杉原先生の試みは様々な点で大成功を収めています 本間 勇人 Gate of Honma Note

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