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私立学校の理念のタイプ[16]~京北学園の川合校長先生との対話⑥

私立学校の理念のタイプ[15]~京北学園の川合校長先生との対話⑤のつづきです。京北学園の校長川合正先生の「ていねいなコミュニケーション論」は、実にわかりやすいし、実行力があるのです。

☆なぜ実行力があるかというと論の設計が多角的だからです。たとえば、お母さん方にあんまり怒ってばかりでストレスをかけるのはちょっと考えものですと川合先生が語るとき、ただほめることが良いのだと説教するだけではないのです。

☆人の行動や成長の邪魔をするメッセージのことを「ゴーレム効果」といいます。反対に「親や教師が子どもに対して期待を持ち、その子の長所を伸ばそうという温かい態度で接していれば、彼らも期待に応えて伸びていく可能性が大きい」ことを「ピグマリオン効果」といいます。というように、コミュニケーションの両義性というか多義性をきちんと対比して語るんですね。

☆これで、親は子どもにどのように接するかというと、「ゴーレム効果」と「ピグマリオン効果」の間をいったりきたりするようにコミュニケーションをとれるようになるのです。

☆親子のコミュニケーションで、「ゴーレム効果」だけが使われれば、ものすごい修羅場になります。子どもたちの反発はすさまじいし、最近の悲惨な事件のきっかけは、おさらくゴーレム・コミュニケーションが親から子どもに日常的になされていることからくるのではないでしょうか。

☆逆に親が「ピグマリオン効果」だけ使ってみたと仮定してください。やはり最後は親のがまんが切れて、虐待に転ずるとも限りません。これも悲しい事件をひきおこしているのではないでしょうか。

☆大事なことはこの両方を最適化することなのです。子どもも親も、それぞれ人によって違う(この差異が大事です)のですが、限界一歩手前ぐらいまでのプレッシャーやストレスはないと逆にサバイブする力は生まれないのです。

☆アメとムチとか愛のムチとか矛盾した表現がありますが、これは家庭や社会の知恵ですね。もちろん、どちらか一方に偏るととんでもないことが起こるわけです。

☆川合先生の「ていねいなコミュニケーション論」は、親に対しワークショップで行われますから、体験を通して、言葉の両義性の概念を経験知に変換できるのですね。これによって、親は、今自分のコミュニケーションはゴーレム・コミュニケーションなのかピグマリオン・コミュニケーションなのか意識しながら、子どもと接しながら試行錯誤で限界値を探しながらコミュニケーションをとっていけるようになります。

☆ほどよいダブル・バインド状態を作り出すのが、コミュニケーションの達人というわけです。言葉の多義性あるいは両義性の最適化こそ川合先生のコンセプトです。ところが言葉のどちらか一方を強調するミスコンセプトが時代をおおっています。川合先生のコミュニケーション論が大事なのは、このミスコンセプトに対抗することができるところにあります。しかも経験知として実行力があるという点なのです。

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