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名門校の条件[20]~茂木健一郎氏のコンセプト

名門校の条件[19]~茂木健一郎氏のコンセプトのつづきです。茂木健一郎さんの教養は、「欲望する脳」(集英社新書)の24のエッセイに通奏低音のように響いています。ですから、名門校の条件としての教養とはこれだと結論づけるとそれで終わってしまいます。24のそれぞれの素材に魂のように宿っているその教養の部分を取り出すのではそれこそ解剖して心臓や脳をとりだすがごとしで、生命を失ってしまいます。

★あるいは茂木さんはクラッシック音楽が好きだそうですが、楽譜だけみて、各パートの楽器の音を想像しているような感じで、なんとも妙な感じです。茂木さんのような作家の文章は、解釈や分析するのではなく、読み味わうのが一番良いようです。まっしかし、おもしろいと思うところを抜粋しながら貧困ではあるけれども、思いを巡らすことも避けられません。それほど読み手にインスパイアーさせるエッセイなのですね。

★そんなわけで、抜粋を続けましょう。

脳とは、結局は生物が生き延びるために進化させてきた臓器である。生存のための臓器としての脳は、徹頭徹尾利己的に作られている。ダーウィンの進化論のパラダイムは突然変異と生存競争を通しての自然淘汰であるが、生存競争において勝ち残るためには利己的であるしかない。自分以外の人間のことを思いやり、行動する「利他的行動」や、社会全体のことを考える公共的精神もまた、拡大し、変形した利己的な動機に基づくと説明される。(「17 不可能を志向すること」から)

★のちのち明らかになりますが、茂木さんはダーウィン自身の戦略は決して「弱肉強食」「勝組負組」「優勝劣敗」という理論でなかったと冷静に判断されていますが、日本の官僚近代は、どういうわけかそのように理解したのですね。その流れは新自由主義まで貫徹しています。

★このことは日本の官僚近代思想だけではないですね。実はイギリスの政治経済政策も分析学派やカール・ポパーのような思想家の手によると、日本の官僚近代思想流儀のダーヴィニズムに偏りがちになります。

★彼らの戦略は、情けは人のためならずです。他者を思いやっておくと、回りめぐって自分の利益になるという戦略ですから、人間なんて利己的なものなんだと割り切れてしまえるんです。そしてこういう言い方ってどこか賢そうに聞こえるのですよね。

★みんなが利己的に振る舞えば、結果的には社会厚生につながるベクトルが生まれるという発想は、アダム・スミスもそうだったし、まさに市場の原理もそうなのです。

★しかし、アダム・スミスは道徳感情論を大事にするし、市場の原理も、配分の正義を考慮するかどうかで、ダーヴィニズムとは微妙に差異がでてきます。

★ダーヴィニズムは実証主義につながりますから、目に見えないものやデータに基づかないものは考えないという傾向に陥ります。1+1が2以上でも以下でもないという要素還元主義の傾向になるわけですね。

★ところが私立学校の過半数以上は、要素還元主義ではなく、関係総体主義だし、シナジー効果を生むことを望みます。要素還元主義にボランティア精神はないでしょうね。犠牲的精神などはもってのほかでしょう。

★名門校の精神の条件とは結局、要素還元主義とは相いれないようです。茂木健一郎さんも、「欲望する脳」の中で、一貫してそのことにこだわっていますね。 [本間 勇人 Gate of Honma Note

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