PISA 2006結果から[06] 習熟度レベル3を超えられないコトの意味①
★PISA2006結果から[05] 数学の習熟度レベル3の意味のつづきです。読解リテラシー、科学的リテラシー、数学的リテラシーをみてきましたが、日本の15歳の生徒たちは、いずれのリテラシーも習熟度レベル3までの割合が50%を超えています。読解リテラシーは69.1%、科学的リテラシーは58.0%、科学的リテラシーは58.1%の生徒が、習熟度レベル4にシフトできていないのです。
★このことは単純に国際ランキングが転落する要因だから、なんとかしなくてはという文科省的発想より、もっと事態は深刻です。すでに見てきたとおり、このレベル3から4にシフトすることは9歳(10歳)の壁を乗り越えることを意味すると思われますから、6割近い生徒が、9歳(10歳)の知的枠組みのまま成長してしまうということです。
★もちろん、この知的枠組みのままで、日本国内で生きていく分には、あまり問題ないのかもしれません。大学入試もそのほとんどが記憶にたよる出題がされているとするなら、レベル2の知的枠組みのまま成長しても問題はありません。
★ものごとを収集するだけの趣味人であれば、レベル2の枠組みで十分です。決められた工程でモノづくりをするだけなら、レベル2の枠組みで十分です。軍隊的な集団で、上意下達のような組織で、上司の指示に従って仕事をしていくのならレベル2の枠組みで十分です。
★1つのことを研究し続け、知的枠組みがレベル3であっても、この知的枠組みでずっと辛抱して研究していると、突然アハ!体験ということはあるのでしょう。具体的ケースやフィールドワークを続けて、「分類・照合」しているうちに、あるときヒラメクということは、天才のケースでよくあることです。しかしこれは万に一つのケースですね。
★レベル3までの行為は、特に子供のころは大切で、レベル2ではなく、レベル3のレベルで十分なので、体験とちょっとだけ抽象的作業をして、レベル4にシフトするプログラムがあると、すべての生徒がクリエイティブになるのですが・・・。そもそも国語の学習指導要領が、中学でなんとかレベル4に届くか届かないかです。
★しかし、レベル4にシフトできない、本当のこわさは、一般化できないことの深刻な事態なのです。それは集団生活はかりにできても、チームワークやコラボレーションというものができないということなのです。ましてグローバルなリーダーシップは発揮できないし、メンターもできない。したがって、他者の話に耳を傾けることができないのです。他者の話に耳を傾けることができないのですから、寛容性などあり得ないわけですね。
★エコロジカルでアーティスティックでフィロソフィカルな都市再生が、世界で進んでいます。日本もその例外ではないのですが、国や自治体、ゼネコン主体で、市民のアイディアが生かされることは日本はあり得ません。1人ひとりのライフスタイルを創っていくことなどできないというのが深刻な状態です。
★いやICTの発達が、1人ひとりのライフスタイルを支援するはず。それがデジタル資本主義の行方だと言われるかもしれません。そうだと思いますが、このテクノロジーやイノベーションの国際競争力において、欧米やBRICs、韓国などの国々に溝をあけられているのが現状なのです。 本間 勇人 Gate of Honma Note
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