« 首都圏 中学受験 2008 [04] | トップページ | 首都圏 中学受験 2008 [06] »

首都圏 中学受験 2008 [05]

☆今日、フェリス女学院の出願が始まりましたが、日能研の倍率速報では、集計中です。四谷大塚の入試情報センターでは、情報を公開しています。神奈川を拠点としている日能研がフェリスの出願初日の数を公開できかなかったというのは興味深いですね。日能研の受験に対する基本的な考え方・パラダイムが次のステージにシフトしたのかもしれません。

☆日能研というのはある意味でカオスモーズで先端を行っている塾です。2代目の高木代表というのは、かなり先見性のあるオーナーで、今日の日本の教育で話題になっている論点は、すでに22年前にCIを行ったときに検討し始めていました。コンピュータを駆使して、授業―テスト―面談(EQ的要素も含む)―カリキュラムをコンピュータでDB化し、PDCAサイクルを早々とやっていたし、86年には入試情報センターを開設して、私立中高一貫校の情報を収集して、今の「進学レーダー」のような情報誌で中学受験のマーケットを創出していました。

☆トフラー夫妻が、「パワー・シフト」を出版した当時、たぶん出版講演で日本を訪れていたときだと思いますが、ふらっと日能研渋谷校に寄って、知識産業社会が日本でも興っていると感慨深げに去って行ったものです。

☆高木代表とそのブレインは、日本の東大を頂点とする学歴社会を超えるステージやビジョンを明確に描いていましたが、内部では不思議なことに学歴コンプレックスを無意識のうちにもっていて、それをポジティブに転換できず、日能研をあくまで従来型の受験塾でよいと考えるブレインもいました。とくにSAPIXとはちがって、80%の生徒は超難関校には進まないわけですから、その80%の顧客の満足を重視せざるを得ないわけで、いつしかそちらの立場に完全に同調してしまうというケースもなかったわけではないでしょう。

☆塾としては、いわゆる超難関校にたくさん合格させる必要があるのですが、ある意味受験の百貨店ですから、あらゆる中学に進学する状況も作らねばならないわけです。それで、合格した学校が自分にとって最高の学校だという表現戦略を遂行したのでしょう。

☆しかし、時代の流れは、「費用対効果」という魔法の言葉をみな使いたがり、目先の利益を考えることが経営センスがあるということになり、みなそこに進んでいく傾向になります。こういうとき一番先に予算が切りつめられ、人材の育成を止められる部署は、シンクタンクですね。これはどこでもそうです。

☆日能研は、そこで今新たな戦略にでているのだと思います。このインターネットの時代、何も自前の情報部署をもっている必要はないのですね。情報部署は最小限に節約し、お金が入ってくる流れだけを、つまり営業力だけを強化すればよいわけです。学びのシステムは、自動化しているわけだから、生徒たちは自ら学び、自ら振り返り、自ら学習方略をステージアップしていけるのです。

☆そうはいっても、自立した学習者になるまでには、サポートが必要です。また壁にぶつかったとき、フォローしたり、ピアカウンセリングしていく必要があります。このサービスは、お金を直接回収できる知的営業行為です。一般的でマクロな情報を収集するシンクタンクは、外部にあればよく。スタッフがWebでタダ同然で個人的に取得すればよいのです。

☆マクロより、個々の生徒のミクロの情報収集のほうが優先だし、この情報は一人ひとり違うので、シンクタンク的な発想の情報収集分析では役にたたないのですね。日能研のシステマチックな学びのカウンセリング路線は、企業の人材育成分野では先端を行っているわけです。

☆ただし、そういう高木代表のビジョンや構想を実行に移すブレインがどのくらいいるのかは、今となっては不明です。私立中学という最高の知的領域に近接していながら、知的なものをちゃかす人材も一方でいます。学びの組織としての構想はすばらしい。でも経営マネジメントは混沌。まさにカオスモーズです。中学受験の動向は、塾という組織構造・機能・影響力なども考慮にいれる必要があります。

|

« 首都圏 中学受験 2008 [04] | トップページ | 首都圏 中学受験 2008 [06] »

文化・芸術」カテゴリの記事