首都圏 中学受験 2008 [10]
☆昨日(1月15日)、栄光とフェリスは出願を締め切りましたね。と同じぐらいに、武相と横浜が出願を始めました。栄光もフェリスも昨年と比較すると応募者は若干減りました。栄光は826名から763名に、フェリスは462名から456名に。
☆このレベルの学校は倍率が3倍前後あればよいわけですから、この減り方は学校当局にとっては痛くもなんともないでしょう。しかし、私は問題があると思います。このような結果になったのは市場の原理を阻害する要因があるからです。
☆栄光やフェリスを受けたいのに、偏差値を考えると難しいから受けないという合理的経済原理が働いているから、立派に市場の原理が働いていると言われるでしょうが、果たしてそうでしょうか。
☆たしかに合理的ですが、それは受験直前の選択判断なのです。しかし、そこに到るまでに、消費者の欲求を前面にだしながら、巧みに偏差値という指標で受験生の配分を行っているのです。本来偏差値は、市場の原理の指標に過ぎないのです。ある意味オークションです。人的資本が不足しているから、もっと創ろうという指標のはずです。
☆ところが、4年生ごろから、人的資本の創造をストップさせる配分という市場の原理を阻害する機能が働くのです。親の方も多くはその阻害要因をありがたいアドバイスだと錯覚してしまうし、実は私立学校の先生方にも、入学するのは一握りだから、そんなに塾が煽って一部の学校の倍率があがるようにしかけないで欲しいという先生もいますね。
☆私立学校が栄光とフェリスしかなければ、それはそれで問題だし、すべての私立学校の受験日が同じだと、これもまた配分になってしまいます。しかし、入試日が複数日あるわけですから、必ず戦略的に合格できるのです。ですから、その戦略は学校選択者自身が決定する環境を作らなければならないのです。
☆しかし、今はアドバイスは方向付けになり、偏差値による受験校の配分的役割を果たしつつあるのではないでしょうか。もちろん、市場の原理というのはそんな純粋ではなく、誤謬性があるものですから、それはしかたがない。
☆問題なのは、それをチェックする情報センターがないということです。最近では心ある保護者や私が心あるかどうかは別として、そのような情報を公開できるインフラ整備がされているので、活用していますが、まだまだ足りませんね。もちろん私の考えなんかも偏っている部分はあるでしょうから、ときどき他のブログや掲示板で、言いたい放題言われていますが、それも市場の原理の機能の一つだと思います。
☆浅野はその市場の原理を巧みに利用している戦略的学校です。麻布や栄光を受験した生徒が2月3日に受験します。偏差値の高い生徒が受けに来る学校だとういうくだらない教師もいますが、それは受験生が怒りますね。そんなことを言う教師は、麻布や栄光を受験するために勉強する内容を全く知らない不勉強な人です。
☆彼らは、知識も豊富だけれど、複眼的思考と自分なりの考え方を表明する言説を鍛えている生徒たちです。精神的にもman for othersを知っています。受験勉強でこのレベルまでやるのです。もっとも、知っているから、日本のfor othersが村落共同体的鬱屈で充満していることに気付いて反発するのです。
☆イエズス会はそのことを知っていて、キリスト教世界観をその日本流の共同体に忍び込ませて布教するので、学内で神父とやりあう知的不良が噴出するのです。そういう純粋な知的不良をみて、馬鹿だなあ、そういう理不尽なルールがあるのが現実だぜ、悪法も法なんだよ実社会では。神の国でしか解消されないというのがキリスト教だろうとメタ的な発想を持っているすてきな人も輩出されます。典型例として知っている人と言えば、前者は横浜国大で経済学の教授をやっている方ですね。後者は脳科学者で、知っている人も多いかもしれませんね。
☆麻布は≪私学の系譜≫の源流ですから、日本の官僚近代とは全く違う近代社会を夢見て、知的で芸術的教育活動をしている学校で、教師自身がすでに知的不良です。最近は日本の教育行政は規制を厳しくしているので、したたかにルールを逆手にとる行動を取っているようですが、生徒たちもそっくりですね。ただ中途半端にちょいわるだと居場所はちょっとないかもしれません。探究するにも反発するにも極端じゃないとね。麻布学園はヘルマン・ヘッセの描くギムナジウムの雰囲気や友情のあふれる学校だと思います。ヘッセは両極端は一致するという思想の持ち主です。
☆ヘッセの描く物語の背景には、プロテスタンティズム、ヘーゲル、カント、トマス・アキナス、フロイト、ブッディズム、シュタイナー、バッハ、セザンヌ・・・・などの教養がぷんぷんしていますね。もっとも麻布とヘッセを重ねる人はあまりいないでしょうから、ここは完璧な独断と偏見です。しかし、ヘッセは、実は日本のアニメ界にも影響を与えているし、アメリカのロックにも影響を与えている小説家というより思想家です。
☆とにかく、そういうおもしろい勉強をして破格の人的資本―私はここを最近クリエイティブ資本(リチャード・フロリダから影響されて)と呼んでいますが―を自己形成している人材をつくる原野が中学受験です。日本の教育行政では無視されている開かれた原野光が中学受験です。ハイデガーなら存在の光とでも呼んだでしょうかね。そうはいいながらも原作筒井康隆さんの「パプリカ」のアニメを文化庁は支援しているんですね。官僚の中にもハイデガーの世界を夢見ている人もいるんですね。もっともハイデガーはヒットラーを救世主だと一瞬間違ってしましましたが・・・。両義性、両刃の剣、ジレンマ、矛盾、カオスモーズ・・・。
☆こんなこと真面目に語るのはヘンだと思われる方多いかもしれませんが、大妻女子大の理事長だった中川秀恭先生などはそういうことを真剣に論じていたし、麻布学園の氷上校長はもちろん今も語り続けています。
☆話がそれましたね。もとに戻しましょう。浅野はそういうクリエイティブ資本を形成している生徒を受け入れる時間差という市場の戦略を実行しているのです。浅野自身がそのようなクリエイティブ資本を生かしているかどうかは別です。おそらく人的資本としては相当豊かにしているでしょうが・・・。そこが私が浅野に不満なところなのですが。これも私の感想です。まだまだ日本は、人的資本とクリエイティブ資本の差異が認識できるような産業構造社会ではないので、ここは浅野のせいではないことは多少弁護しておきますが。
☆だから、栄光やフェリスにむけて良質の受験勉強を、この学校に行きたいと欲求している生徒は、偏差値による配分的正義(一見正義ですね)に惑わされず、思い切って勉強して臨んで欲しいですね。そしてそういう生徒が武相や横浜中も受けるというのがあってよいのです。特に武相は学内が一丸となって、クリエイティブ資本をたくさんもった人材を育成する学校です。横浜中は一部の強烈な教師がそこを守っています。その先生がいなくなれば、人的資本形成に逆走するかもしれませんが、当面その恐れはないだろうし、そのうち学内が大きく変わるでしょう。
☆大事なことはクリエイティブ資本を蓄積できる受験勉強をするには、そのような人材を形成することを標榜している学校を選択し、そこに向かって勉強していくということでしょう。もっとも標榜は明確にはされていませんね。だから私がおせっかいにも、そういうエクセレントスクールとクオリティスクールを探しているのです。
☆持論ですが、エクセレントスクールとクリエイティブスクールを生徒が選択するようになると、トラディショナルスクールもエリートスクールも質を改善すると思います。もっともこれも市場の淘汰で決まることですから、余計な意見は市場の原理の阻害要因になるかもしれません・・・。
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