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首都圏 中学受験 2008 [21]

今朝の日経新聞に、「自治体ごとに基準にばらつきがあると指摘されていた指導力不足教員の認定について、文部科学省はガイドラインの素案をまとめた」という記事が載っていました。

☆このガイドラインは、すでに昨年の12月27日に文科省のサイトに公開された「『指導が不適切な教員に対する人事管理システム』に関するガイドラインについての中間整理(案)」に依っているのでしょう。このレポートによると、

「指導が不適切である」教諭等とは,知識,技術,指導方法その他教員として求められる資質,能力に課題があるため,日常的に児童等への指導を行わせることが適当ではない教諭等のうち,研修によって指導の改善が見込まれる者であって,直ちに後述する分限処分等の対象とはならない者をいう。

☆ということらしいのですね。たしかにこういう教員が研修などによって、復帰できるシステムは大事です。しかし、問題はこの認定の手続きと方法です。校長が市町村教育委員会に報告し、市町村教育委員会が都道府県の教育委員会に申請し、指導状況の把握という動きになるのです。

☆ここには難しい問題が横たわっています。スコアやデータの積み重ねがない中で、判断するわけですから、判断者の恣意性を排除できないシステムだからです。

☆教員の地位については、1966年に「ILO・ユネスコ 教員の地位に関する勧告」が世界標準として採択されています。これに照らし合わせて、公立の校長や教育委員会が判断できるかどうかは、疑問です。できる資質はあるのかもしれませんが、公開議論ができるオープンシステムが盛り込まれていない以上、難しい・・・。

☆教員が違法行為を働いた場合は、裁判システムがありますが、指導力不足の判断は法律に照合することはできません。ガイドラインがあるじゃないかというのですが、これは判断者の順番が決まっているだけで、価値判断のガイドラインではないのですね。下手をすると人権問題で、泥沼化するもとです。もっともこの法化現象の流れに気付いていない教員の方が多いのかもしれませんが。

☆その点、私立学校は教育委員会のコントロール下にはないので、この認定システムに乗る必要は全くないのです。ただし教育基本法が改正され、教育委員会の強制力が忍び寄る可能性が針の穴ほどの大きさですがあいています。私立学校の先生方が、危機感をもっているのも当然でしょう。

☆さて、では私立学校の先生方の質のチェックは誰がするのかということですが、それは市場の原理によります。出願の時期である今が、まさにそのチェックの瞬間なのです。応募者が多いところが、質の高い教員が多いと思われている学校です。そして、入学後、もしそうでなかったということがあったなら、保護者は黙っていないでしょう。

☆文科省のガイドラインに指導力不足の例が次のように載っています。

① 教科に関する専門的知識、技術等が不足しているため、学習指導を適切に行うことができない場合(教える内容に誤りが多かったり、児童等の質問に正確に答え得ることができない等)
② 指導方法が不適切であるため、学習指導を適切に行うことができない場合(ほとんど授業内容を板書するだけで、児童等の質問を受け付けない等)
③ 児童等の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導を適切に行うことができない場合(児童等の意見を全く聞かず、対話もしないなど、児童等とのコミュニケーションをとろうとしない等)

☆私立学校の場合、①・②については、間違いなくそれぞれの学校の中で独自の研修が行われています。大学進学実績が十年以上右肩下がりという学校も稀ですが、そういう私立学校は生徒が集まりません。ただ、③については、まだまだですね。京北の校長川合先生とゆるやかなネットワークをついないでいる私立学校は、コミュニケーションの本格的な研修を行っているでしょうが、そうでないところは、説明会などで、自ら保護者がチェックしなければならないのです。麻布や開成の先生が川合先生のネットワークとつながっているのは、さすがですね。東大の基礎学力研究グループが、川合先生のコミュニケーション授業に注目して、協働研究をしたことがありましたが、東大もなかなかやるものですね。

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