首都圏 中学受験 2008 [31]
県教育委員会は23日、県立千葉中学校の2次検査の結果を発表した。合格者は募集定員と同じ、男女それぞれ40人の計80人。・・・1次検査は2142人(男子1145人、女子997人)、2次検査は478人(男子240人、女子238人)が受検した。・・・村山元信・同校開設準備委員長(千葉高校長)は「伝統ある千葉高の重厚な教養主義に見合う、意欲ある子供を集めた。教育に重い責任を感じている」と話した。
☆「伝統ある千葉高の重厚な教養主義」という言説は、他の公立中高一貫校には見られません。この教養主義が知識重視型の教養なのか、批判的精神重視型の教養なのかは、まだわかりませんが、「伝統ある」という言説を使っているわけですから、批判的精神より知識を重視する教養主義であるのは間違いないでしょう。
☆しかし、たとえそうだとしても、1878年に創設されて以来130年の伝統を理念にできる公立中高一貫校は珍しいかもしれません。ある意味私学以上に私学である側面ももっているといえるでしょう。
☆ただし、批判的精神より教養主義だとすると、国際標準のモノサシをあてると、レベル3か4(最高はレベル6)どまりということを意味します。今のところこのリテラシーレベルで、十分大学に入れるので、誰も気づいていませんが。
☆そうそう大学の偏差値と国際標準のレベルの関係はどうなっているかというと、レベル4までの集団を母集団とする偏差値であることをしっかり認識しておいてください。レベル5や6は、私立中学の入試においては認められますが、日能研、四谷大塚などの模擬試験は、残念ながら麻布や開成のような問題を出題するわけにはいかないので、レベル4までの問題がベースです。それ以上のレベルの思考は、それらの模擬テストでは、採点の都合で、測ることはできません。
☆したがって、偏差値は入試問題の問いのレベルには届かない模擬テストの問いのレベルができるかできないかの成績分布に過ぎないのです。つまり、模擬テストで測れるレベルと入試問題で測れるレベルには大きなズレがあるのです。
☆テストベースのテスト会と授業ベースのテスト会では、パワーが違うのは、授業は模擬テストのレベルを超えた内容を学べるからですね。授業ベースでない模擬テストの結果はあくまでも参考程度にしかならないのはそういうわけです。テストベースの企業が塾に買収されたり、塾を買収したりするのは、そういう弱みをもっているからですね。
☆必要悪なのかどうなのかはともかく、グローバルなモノサシでみると、進学塾の学びのレベルが高いのは明らかです。しかも、そのレベルは批判的思考や創造的思考を補うのですから、生徒たちが小学校より私立中学受験準備塾の方が楽しいというのは当然なのですね。
☆ところが、こういうシステムの違いを認識しないメディアは、そうそう文科省も、教師の責任にするんですね。学びのシステムの質の差異(リテラシーのレベル差)が楽しいかどうかを決めているのです。日本の学習指導要領は、レベル3どまりですから、楽しくないのは言うまでもないでしょう。公立における、すぐれた教師もレベル3を超える授業を設定できませんから、楽しい授業を構築できないのですね。教師の質を問う前に、学習指導要領のレベルを問う必要があるのですね。
☆すぐれた教師は、学びのレベル6のシステムをマネージメントすることが主要な役割です。一生懸命レベル3の枠組みの中で教える情熱があっても、それだけでは生徒は好奇心も、疑問も抱くことは不可能です。つまり、おもしろくない授業が惰性で続くことになるのですね。公立ではレベル6の授業をやりたくてもできないのですから、そうなるのはしかたがないのです。ところが私学はすぐれた教師が生きる環境にあるんですね。このシステムがあるということが本当の私立優位の理由です。
☆リベラルアーツと教養教育はしたがって全く質が違うのですね。そこはあまり区別されていませんが、リベラルアーツは批判的思考、創造的思考というレベル5あるいはレベル6の学びのシステムをさすのです。教養教育は、広く深い知識の体系をさすのであって、それはレベル3か4、つまりまとめる力と論理的思考どまりなのです。私立学校の先生方がリベラルアーツという表現をよくするのは、そういう違いがあるからなのです。
☆そうそう、麻布の氷上校長先生の実践されている教養教育は、リベラルアーツの意味なのは言うまでもないでしょう。県立千葉中学校の言っているのが、もしもリベラルアーツではなく、教養教育だとしたら、そこが限界になるでしょう。それでも東大はたくさん合格するでしょうが・・・。
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