学び野[05] フィンランド・メソッドの発想法としての媒介性
☆フィンランドの発想法は、カルタだそうです。マインド・マップのことで、フィンランド語で「アヤトゥス・カルタ」というそうです。
☆北川達夫さんによると、
中央にテーマを書き、その周囲にテーマから連想したことを放射状に書き込んでいく―これがマインド・マップです。マインド・マップは人間の脳の機能にそった思考法であり、脳の働きを最も効率よく引き出すことができるのだそうです。
日本の教育でも、子どもの自由な発想を伸ばすことは重視されています。しかし、実際にやらさてみると、これがなかなか難しい。テーマを与えたところで、そこから何も思いつかない。あるいは、あれこれ思いつくのだけれど、短絡的な思いつきばかりなので、テーマからどんどん外れていってしまう。しっかりしたメソッドがないと発想がゼロのままか、「無秩序な発想」になりがちです。
☆実に惜しい。体験をして終わるのではなく、体験で気づいたり、興味を持ったりしたことをマインド・マップという発想法を媒介として経験値に高めておくというところまではよいのですが、テーマを中央に限定するというところが、惜しいですね。
☆基本的にはこれはツリー構造の思考の形で、思考のスタイルは、必ずしもツリー構造でなくてもよいわけです。またテーマからどんどん外れていって新しいテーマがでてきてもよいわけです。
☆はじめ中央に書かれたテーマとは違うテーマがあとから付け加わっても良いわけです。もしカルタが脳の機能にそっているというのであれば、むしろツリー構造ではなく、囲碁型の構造のほうが適しているかもしれません。
☆初めはつなっがていないようにみえても、実はつながっている。非連続の点どうしを結ぶ様々な曲線があるはずです。非連続の連続を見出したとき、あっ!となるのですが、その発見のツールとしてあるいはメディアとしてマインド・マップは有効なんですね。
☆おそらく企業のマインド・マップはツリー型だと思います。学びで活用されるマインド・マップはむしろ位相空間的ですね。企業では人材を評価するとき、最近接領域など見向きもしません。教育ではむしろこの最近接領域のつながりが大事です。ですから、マインド・マップも企業とは違う使い方をしているはずです。
☆フィンランドでこのマインド・マップが本当のところどう使われているかは、北川さんの本からではわかりません。しかしフィンランドの総合制カリキュラムは、かなり横断的でマトリックスですから、単純なツリー構造の発想法が日常化しているわけではないと予想します。
☆いずれどなたか資金力のある方が、フィンランドをもう一度視察して、この点についてリサーチしてくださるといいですね。
☆いずれにしても、中央にテーマを書くところからはじまるマインド・マップばかりでは、発想は硬直化します。逆説的ですが・・・。
P.S.
北川さんの本に、カルタを使って自己紹介をしようというページがあります。中央にテーマである「私」を書いて、そこから私の枝や葉を伸ばしていこうというものです。これとは逆に、かつて、学習院女子の中学入試で、「私」という言葉を使わずに自己紹介しましょうという作文の問題が出題されたことがあります。やはり、カルタは中心からばかりではなく、周辺から書いていくトレーニングをするのもおもしろそうですね。
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