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学び野[08] フィンランド・メソッドの批判的思考力としての媒介性

☆北川達夫さんによると、フィンランド・メソッドにおける批判的思考力は論理力の応用段階だそうです。論理力の応用とはどういうことでしょう。

☆批判的思考力をトレーニングする際も、やはりカルタ(マインド・マップ)を活用します。発想力や論理力のトレーニングの時、中心に言葉やフレーズを置いて関連する言葉や理由のフレーズを増やしていったのですが、批判的思考力の場合、中心におかれるのは、テーマそのものだったり、論文そのものだったりするのです。

☆そしてそのテーマや論文のいいところと悪いところを十個ずつつなげていくのです。あるいは、本当にそうかなという発想をつなげていきます。

☆これは一体論理力のカルタとどう違うのでしょうか。北川さんは例として「遠足とはいかなるものか」というテーマの場合を挙げます。遠足とは楽しいものだと考える生徒がほとんどでしょうが、遠足とは修業のためのものだと考える生徒がでてきたらどうなるかと。

☆当然だと思っていることを覆してみること。これが批判的思考力なのですが、それをカルタでやってしまうんですね。論理力の段階では、概念の精査というより、論理のフレームが大事で、批判的思考力はそのフレームの中にいれる概念の中身そのものに焦点があてられるのです。

☆発想力はフレームなのか概念の吟味なのかは、まだ混沌としているのですね。表現力は混沌とした発想とそれをまとめる論理を統合する。しかし、それによって、発想の芽が摘まれ、一般的な考え方にしぼんでしまう。つまり体験>経験値。そこで、批判的思考力。そうじゃないだろう。で、体験<経験値と大逆転という媒介項なのですね。

☆ここにはヨーロッパのリベラルアーツなベースがあります。論理力の段階のカルタはフレームづくり。これをデカルトやスピノザ、アインシュタインは物質の延長(属性)と言ったんですね。そして批判的思考力の段階のカルタは、概念の脱構築。これを彼らは思考(属性)と呼んだのです。カントだったら、前者を実行力、後者を構想力と呼んだでしょうか。

☆数学の領域ではニコル・ブルバキが、これを構造主義的にとらえたでしょうか。ロラン・バルトだったら、記号論的に延長属性を外延、思考属性を内包と言ったでしょうか。

☆この媒介項の運動をヘーゲルは弁証法と呼んだでしょう。エリクソンはこの媒介項の運動を精神の成長理論としてライフ・サイクルと呼んだでしょう。もちろん、中世や古代の思想にも連綿として遡ることができます。このヨーロッパの伝統に挑んだのがフェリックス・ガタリですね。

☆いずれにしても、フィンランド・メソッドの思想の系譜、実は日本の私立中高一貫校にある私学の系譜につながるのですが、このベース抜きのフィンランド・メソッドの導入は、効果を上げられないでしょう。

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