08中学入試問題とPISA[05] 桜蔭の国語は推論がベース
☆今年の桜蔭も記述が中心でした。昨年と比較すると難易度は変わらないのですが、リテラシー能力のカテゴリーに少し変化がありました。OECD・PISAの指標に照合して昨年と今年の能力カテゴリーを比較してみました。
☆知識といっても漢字の書き取りですが、これは全く変化がありません。昨年は「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」の問いのバランスがよかったのですが、今年は「テキストの解釈」に偏っています。
☆もっとも、「テキストの解釈」は文脈を推理しながらイメージや意味を生み出していくので、「情報の取り出し」のときに使う論理と「熟考と評価」の時に使うイマジネーションを少し使いますから、結果的にバランスは崩れていないということかもしれません。むしろはっきりしたことは、「テキストの解釈」という文脈から推理する思考スタイルが、桜蔭では重要だということです。「モザイクトレーニングから置き換えトレーニングへ」が桜蔭の読解リテラシーで要求されていることなのです。
☆ふだんから文章の要約をするとき、文章中の言葉をつなぎ合せるモザイクトレーニングではなく、さらに別の言葉で置き換えてみるトレーニングも必要だということですね。
☆さて、難易度の比較をレベル別に比較したグラフも作りました。「批判的思考力」を要するレベル5の問題が多くなっていますね。創造的思考を要するレベル6の問題とは、次のような今年の最終問題です。
「おじいちゃん」は、「ひとりの人間のこの世の役割とかは、人間にはわからん」という箇所もふくめて、「知らんということはつよいことや」と言っていますが、そこから、「おじいちゃん」がどのように考えているとわかりますか。200字以内で説明しなさい。
☆この問題は周りの人たちの死に直面しながら、そこから逆に生きるということを考えるという問題で、たんに文章を解釈するだけではうまく解答が導き出せないないですね。「熟考と評価」という自分なりの考えやイメージを引き出しつつ、文章の意味を推理する必要があります。だからレベルは6なのです。昨年の合格者の平均点をPISAメソッドでシミュレーションすると、58.4%で、今年は60.9%になります。最初に述べたように、全体としての難易度に変化はありません。
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