08中学入試問題とPISA[06] 駒東の国語の素材は衝撃的
☆今年の駒場東邦は相変わらず長文の物語を読解する問題。受験生はまず15ページもの長さの物語を読まねばなりません。そして基本的な問いから最終的には創造的思考力を要する問いまで、読解リテラシーの多角的な視点を持っているかどうかが試されます。
☆合格者の平均正答率は70%弱になるでしょうが、素材文そのものの中身は小6の男子生徒にはショッキングだったかもしれません。リアルな問題といえばリアルなのですが、なぜ入学試験でこのような素材が選択されたのか、いずれヒアリングのチャンスをと思っています。
☆71年生まれの長江優子さんの「タイドプール」という作品から出題されました。この71年生まれというのは、中学受験を経験している世代が活躍している世代でもあります。長江さん自身が経験しているかどうかわかりませんが、この作品の中でも塾に通うシーンは日常風景として出てきていたと思います。主人公は女の子。自分の母親も、おばあちゃんもガンという病気にかかっているし、自分の母親が死んだ後、家庭に入ってきた新しい母親、つまり継母との最初の葛藤とそれを乗り越えていく過程が書かれています。
☆世界の問題が、家庭の中にまで入ってきているわけですね。もはや世界や社会の問題を考えるのに、時事問題やニュースにアンテナを立てておく必要がなくなったかのようです。家庭の崩壊と新生、病気と死。舞台は簡単に日本から海外にシフトしたりもする。家族という世界と地球規模の世界の問題性が共通していることが、この世代の作家の作品の特徴です。
☆団塊・断層世代までは、中学ぐらいまではまだ大人がふんばって、世界規模の問題が家庭に入らないように、自分たちが防波堤になっているストーリーが多かったような気がしますが、最近の物語は、家庭の中に世界規模の問題が簡単に入り込んでいるという意味でのリアリティが強烈なイメージを結びます。
☆女性が描いた女の子の物語だから、男子校の受験生は、逆に冷静に読解できるのかもしれませんが、感受性の豊かな生徒はどう感じたでしょうか。もっとも駒東の文章の選択の傾向に慣れているから、そんなことはありえないのかもしれません。
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