08中学入試問題とPISA[07] 海城のテストデザインは緻密
☆今年の海城の国語の中学入試問題(一回)は、いつもながら、緻密にテストデザインがなされています。選択肢の問題でありながら、情報を正確に取り出しているかどうかを問う真偽問題でとどまることなく、テキストを解釈する問題は当然ながら、テキストを熟考・評価する問題まで出題しています。
☆考えるレベルも、情報を確認、整理するだけではなく、論理的につなぐ作業や批判的かつ創造的に思考するレベルまで問いかけています。受験生が世界標準の読解リテラシーのレベルをすでに乗り越えているかどうかがわかるようになっています。
☆PISAの読解リテラシー分析でシミュレーションすると、合格者の全体平均正答率は61.1%です。選択形式の問題が多いので、実際は、もう少し易しめかもしれません。
☆素材文である物語とエッセイのテキストの選択は、いつもながら本当にすばらしいですね。物語は登場人物の置かれた社会的背景が非常に複雑なのですが、まさに現代の小学生のおかれているあまりにリアルな状況を映し出したストーリーです。海城学園が大事にしている公正としての正義を受験生は受けとめなければならないのですが、そういうところまでよく考えられていますね。
☆エッセイのほうも、関係性としての命がテーマです。人は一人では生きていけないから協力し合って生きていこうという程度の関係性ではないんですね。どうしようもない運命的な関係性の重さから、純粋に生まれた瞬間にさかのぼればさかのぼるほど逃れられない存在の事実に気づいていくというようなエッセイです。「関係性」の厚みを小学生の段階でどこまで整理しておかねばならないのでしょうか。
☆単純に読解方法論を学ぶだけではもったいないテキストです。物語の方は、小学校5年生までの間にじっくり読んでおくとよいのではないでしょうか。著者と作品を紹介しておきます。
熊谷達也著 「七夕しぐれ」光文社(2006年10月) 定価1,600円+税
(入試で出題された箇所は、326ページある大著の最後の部分です。小学校5年生までは、入試問題でクライマックスを読んでしまうことになる前に読みたいものですね。)
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