首都圏 中学受験 2008 [55]
☆昨日5日、筑波大附属駒場中(筑駒)の合格発表がありました。日能研(Nと表記)とSAPIX(Sと表記)の結果はリストにある通りです。2月11日に入学手続説明会や合格者説明会が筑駒と開成で開催されます。これで、両方合格している生徒がどちらの学校に行くかがほぼ決まりますから、繰りあがり合格者が開成の方ででるでしょう。もっとも定員よりどのくらい多めにとっているかによりますが。例年通りだと、でるわけです。そうすると開成―栄光を併願している生徒の間でも動きがでます。
☆すると麻布―栄光を併願している生徒にも影響がでるはずです。もっとも麻布は繰りあげ続けることは生徒の心に動揺を与えるので、どこまでも追うことはないですが。ともあれ、これからが中学入試の合格の第二ステージなのですが、2月いっぱいは、いつ繰りあがりの連絡がくるかわからないので、受験生と保護者は期待と不安の毎日になります。これはなかなか大変な期間なのですね。待てば海路の日よりありともいいますが、そう簡単ではありません。精神的な健康を保つよう努力してほしいものです。
☆さて、このリストを見て問題を感じられる方もいるでしょう。それはNとSで、リストの学校の総定員の70%以上を占めているということです。これは、いわゆる寡占とか独占状態で、本当はあまりよくないですね。
☆というのは、両塾とも企業ですから、市場の原理で動いているはずですが、受験といえども教育的な要素を意識しないと避けられないのです。何を言ってるのか?と思われるでしょうが、教育的要素で厄介なのが道徳なのです。
☆あるいは価値観と言ってもよいかもしれません。Nから開成に合格者が増えたとき、湘南エリアから生徒がたくさん通いはじめました。すると下町の雰囲気だった開成に少し違う風が吹き始めたと言われています。それからここ数年はSからの合格者が多いですね。特に開成は高校募集もしています。Nは中学受験しかやっていませんが、Sは高校受験もやっています。おそらく開成の高校入試はSの独壇場でしょう。
☆すると、開成は自分のハビトゥス(文化資本再生システム)の前に、Sのハビトゥスと常に闘争しなければなりません。開成の生徒が通う鉄緑会というハビトゥスとも闘わねばなりません。実際、自前の夏期講習の時間を増やして、塾に行かずに母校で学ぶ仕掛けを創っています。
☆もちろんNのハビトゥスもあるわけですが、Nはもともと人間形成は私学に任せ、知力にできるだけ傾注して子どもたちの支援をしようという自覚がありますから、私学に入るまでの子どもたちの人間形成は、通っている公立小学校と家庭の方針に任せるというシステムです。果たしてどこまでその成果がでているかは測りようがありませんが、そこは市場が決めることでしょう。Sのハビトゥスの性格はよくわかりませんが、それは開成の変化に表われてくるでしょうから、少し様子をみてみましょう。
☆いずれにしても合格者の寡占状態は、無意識のうちに多様な価値観が失われるという影響を私学にもたらしかねません。Nがシェア30%ぐらいでおさえようというのはCSRとしてはなかなかよいバランスだとは思います。
☆もっとも今年Nは開成と桜蔭の合格者のシェアは30%いってませんから、来年はこの両校に関しては、相当興味深い戦略を打ち出してくることでしょう。こういう市場の原理が働かないと、私学の価値の多様性が保てません。そんなこと言っても富裕層というくくりでいけば、結局同質の価値観しか持っていないだろうと言われるかもしれません。だから欧米はリベラルアーツを大事にしているのです。価値の多様性を自己演出できる能力が教養だからです。
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