世界を変える学校[03] 海城学園①
☆今春3月19日、海城中では、第7回社会科卒業論文報告会が開催されました。この出来事だけで、同学園が≪世界を変える学校≫であることがすぐに了解できます。10,000字以上の論文を作成するプロセスがいかに多くのフィールドワークとインタビューを経ているのかを想起させます。また、収集した情報の編集過程において、教師と何度も対話が織り重ねられたことでしょう。そしてそれをプレゼンテーションするというのですから、この卒業論文の媒介性の効果は絶大なはずです。
☆もちろん、多くの学校で大学入試のための小論文指導は行われているし、読書感想文などの文集も発刊されています。しかし、それだけでは≪世界を変える学校≫とは言えないのですね。林間学校、臨海学校、工場見学をいくら繰り返しても≪世界を変える学校≫とはすぐには言えないのです。
☆重要なのは、体験<経験値という効果が上がるプログラムになっているか、あるいは仕掛けになっているかということです。中には体験>経験値なんてプログラムもあります。強制的で義務的で押し付けがましく国家道徳的で、つまらないというやつですね。好奇心も開放的精神もなぜ?という疑問も生まれてこないようなプログラムもあります。それはそれなりに負の世界に誘うわけですから、世界を変えるということにはなるのでしょうが・・・。
☆さて、しばらくの間、海城中の「社会科 卒業論文集」を読み解いていきましょう。ハードカバーの立派な論文集です。装丁からして意気込みが違いますね。表紙を開くと、すぐに学年主任の中田大成先生の「序」が目に入ってきます。
☆ここでもなんて海城の学校組織が開かれているのかがわかります。一般的にはこの手の論文集の巻頭言は校長先生が書かれます。それはそれで全く問題ないのですが、ときどきKYな文章が書かれているのを目にします。
☆あっ、この論文集に校長はかかわっていないなぁ。権威として儀式として掲載されているだけだなと思われるものも結構あります。もちろん、麻布の氷上校長のように、嬉々として生徒たちの思考回遊に伴走し、自らも論を生徒にぶつけて知的遊びを楽しんでいることがわかるすばらしい巻頭言もあります。
☆いずれにしても、すでにここで≪世界を変える学校≫であるかどうかがわかってしまうのですね。権威や形式だけというのは、すでに防衛コストが高い学校であり、そんな学校に希望を持つことはできません。もちろん、権威と尊敬とは違います。
☆中田先生の「序」は感謝の言葉から始まります。
学年の生徒たち全員が三年間に亘ってひたむきに取り組んだ“学び”の一つの結晶である「卒業論文集」がここに無事刊行の運びとなりました。先ずは、直接指導に当たられた二人の社会科教員はじめ、生徒たちの取材に応じて下さった官庁や企業の方々など生徒たちの健気な取り組みに御協力いただいた全ての関係者に心よりお礼申し上げます。
☆150字ほどのセンテンスに、次のようなポイントが見え隠れしています。
①海城中の教師の生徒への温かい眼差し
②受動的勉強ではなく、自ら動く学びの環境の存在
③教師のリーダーシップとフォロワーシップの両立
④ステークホルダーへの気配り・目配り
⑤生徒の知性・感性の成長につながる変化の生成
☆①、②は、他校でもありそうですが、③、④、⑤は意外と意識されていないポイントです。このような巻頭言は、グローバルな姿勢そのものですね。こういうところに、他の学校の論文集とは似て非なる海城中の良質な教育が表れています。
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