世界を変える学校[05] 海城学園③
【世界を変える学校[04] 海城学園②のつづきです。】
☆「海城中 社会科 卒業論文集 第14集 2007年度」で、中田先生が書かれている「序」を読み進みましょう。
②の結果(設問別得点率を見たとき、例えば「読解力」を問う問題であれば、OECDが設定する難易度レベル最難のレベル5に当たる「批評的思考力(クリティカル・シンキングの能力)」を測る設問の得点率)が示していることは何か。それはすなわち、日本の子供たちはテキスト(グラフや図表などの非文字型テキストも含む)から情報を正確に読み取る能力を(上記基準でレベル1~4に当たる)はそこそこあるが、それについて考え、自分なりの意見をまとめ、表現する能力や意欲に欠けているということです。しかし、経済がグローバル化し、社会の成熟化が進むこれからの時代において最も要請される能力は、実はこの日本の子供たちが不得手とする能力なのです。
☆中田先生が「世界を変える知性」を明確にしている箇所ですが、先生の視点が最前線のものであることがわかりますか。知識だけじゃダメだ、思考力や表現力が大事だよという言い方をしていないというところですね。
☆OECD/PISAは、世界の国々の生徒が解くわけですから、知識は最小かつ共通するものだけしか使わないのですね。ですから、レベルが1だろうが5だろうが、みな思考力や表現力を使うのです。
☆日本の教育は知識ベースだから、大量の知識とレベル3ぐらいまでの思考力と表現力で満足してきたわけです。中田先生は、そのことを語られているのです。これからの世界では、レベル4や5の思考力や表現力が必要とされているのだと。
☆ところが東大の入試問題でも、思考力や表現力の問題レベルはせいぜい4レベルなのです。日本の優秀生といえば、情報の収集、整理まではたいへん有能だけれど、新しい分析視点やクリティカル・シンキングはトレーニングされていないのです。まさに官僚の能力としては最適ですね。
☆クリティカル・シンキングというのは、批判的あるいは批評的思考ということになっているのですけれど、選択の意思決定思考という意味も背景にあります。もうわかりますね。学校選択から政策選択から職業選択から、何から何まで、日本人は必要とされていなかった、ベルリンの壁が崩れ、バブルがはじけ、それではいかんといういことに、最近気づいたわけです。しかし、フィンランドなどの東西ヨーロッパに挟まれた国、しかも人口が600万人いない国にあっては、市民一人ひとりが、常に選択に迫られてきたわけです。クリティカル・シンキングがすべての市民に必要だったのですね。
☆日本も国民みんなで選択しなければならない局面にぶつかっていますが、もはや大きな物語は失われています。国が面倒をみてくれることはないのです。だから、海城学園のような「世界を変える学校」を選択する視点が肝要なのですね。
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