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08 東大合格発表の季節[10]

☆今年の東大後期試験の合格発表は22日。このへんで、いったんまとめにはいって、あとは後期の発表後にコメントを書き込みたいと思います。

☆9回にわたり、日本の教育文化再生産装置を強化する学校とパラダイム・チェンジのトリガーになる学校をみてきました。前者の学校は東大に入る学力形成を真摯に考えているところです。後者は世界標準以上の学力を形成している学校です。

☆このような見方によって、学校選択をする際に、とにかく東大とそれに準ずる大学に入ることに価値をおいているか、未来の社会で生きる際、日本だけではなく広く世界に目を向けられるようになることに価値をおいているか、はっきり自覚できるようになると思います。

☆どちらの価値観も、よいとかわるいとかは決定できません。現実派か理想派、あるいは危機感駆動型か希望駆動型か、あるいは第三の道駆動型か、選択する側の意思決定の嗜好性の問題なのです。

☆ただし、もし希望駆動型や第三の道駆動型だとすると、ドメスティックな傾向が大好きな日本社会にあって、悪玉ストレスをかかえなくて済むかもしれませんね。危機感駆動型それ自体がストレスをかけて先に進む方法論です。

08 ☆どの嗜好性で選択するか参考になればと思い、表のように、今年東大合格者を輩出した首都圏の私立中高一貫校(佐久長聖や筑波大附属駒場はあえていれておきました)の学力観の差異をリストアップしておきました。

08_2 ☆またそのリストをベースに、学力観の差異の分布もグラフにしてみました。パラダイム・チェンジを起こしそうな学校がまずまず健闘していることがわかります。グラフは学校数のシェアを表していますが、合格者数で計算すると、前者の学校から合格している生徒は77.8%です。細かく出すと、◎印の学校から合格している生徒は602人、○印からは108人、東大合格力を形成する学校からは203人です。

☆602人あるいは○印も含めて710人の学生の中に改革者型リーダーがいる可能性があります。戦略型や専門家型リーダーは、社会や組織の持続可能のためには欠かせない存在です。そのうえで、今日本社会というか世界が求めているのは改革者型リーダーです。もちろん、表やグラフで表現されている首都圏の私立中高一貫校の60%ほどの学校だけに改革者型リーダーがいるということはないのです。

☆ただ、果たしてどのくらいいるのだろうかというと仮説を立てる際の指標としてとらえているだけです。改革者型リーダーは、おそらく組織の中に3%いるかいないかでしょう。東大の1学年の在校生が3,000人ぐらいですから、その中に90人いれば、なんとかなります。ということは東大という組織に限れば、なんとかなりそうですね。

☆しかし、高校卒業生は、文科省の学校基本調査によれば、少子高齢化といえでも、120万人弱(平成19年度)はいるわけです。フィンランドの人口の20%以上がいるんですね。この3%ととなれば、3万6000(人/年)程の改革者型リーダーが育たないといけないことになります。

☆だから東大だけでは、日本の社会のパラダイムシフトはできても、パラダイム・チェンジなんてのはあり得ないのですね。大事なのはそれゆえ私立中高一貫校なんです。≪私学の系譜≫というのは、改革者型リーダーを輩出することをミッションとしています。ところが私学でありながら≪私学の系譜≫に属さないところがあるわけですね。日本全体の私立中高一貫校の1学年の生徒数は7万人ほどです。もしこの7万人がすべて≪私学の系譜≫に属する環境で育てば、改革者型リーダー育成の場としてかなり期待がもてるわけですが、そうはいきませんね。

☆しかし、それでも、私学の40%が≪私学の系譜≫に属しているとしたら、つまり3万人弱の生徒は≪私学の系譜≫に属する私学に進学していることになります。これはやはり≪私学の系譜≫に属する私学に期待がもてるわけですね。

☆東大の日本の教育文化再生産装置としてのハビトゥスの問題点はこんなところ、つまり改革者型リーダー育成の量と質がおいつかないというところにあるのです。この点を東大内部で解決することは710人(1学年)に任せるとして、残りは≪私学の系譜≫に属する私学と別の機関(これは新たに創出するプロジェクトが必要です)とで、改革者型リーダーをあと3万5000人/年創出できるシステム環境の構築。これが喫緊の課題です。

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