学び野[10] 教育空間の媒介性①
☆最近、私立中高一貫校の校舎や施設が、ずいぶん建て替えられています。学校建築は、20世紀型空間としては、監獄と同構造だと言われてきました。一望監視装置として管理が第一だったのですね。
☆たしかに構内を教師が管理するのには機能的だったのですが、外部からの侵入には意外と脆いということが発覚する凄惨な事件も起きました。ですから次に安全という構成要素が加わり、多くの学校で、この点が補強されています。
☆しかし、大事なことは校舎や施設などは教育空間として、つまり学びの空間としてデザインされていなければならないという点が、ようやく21世紀になってから注目され始めました。これは教育心理学の研究の成果かもしれません。カウンセリングという人対人だけの対話では、解決できないことが山ほどあることに直面し、人以外に、生徒が触れる様々な物に応援を頼もうとしたのではないでしょうか。
☆コミュニケーションとは、たしかに人対人の言葉というメディア=媒介項によってなされるのですが、媒介項として、言葉はone of themであるという考え方が浸透してきたのですね。アフォーダンスといって、物や空間や時間が、人に言動を起こさせるという仕組みがわかってきたのです。人は座りたいから椅子に腰かけるというよりも、椅子があるから座るという場合の方が多いのかもしれないというわけです。
☆また認知科学の成果も重要です。知性は何もIQだけではない。EQもあるし、SQもある。いやもっとたくさんある。多重知能=MIという考え方も浸透してきています。
☆そうなると、教育空間はただ箱モノだというわけにはいかなくなるのですね。あらゆるものは多重な意味を、多様なメッセージを持っているということに気付き始めたのです。
☆学びの空間においては、仙田満さんが第一人者です。今は東工大の名誉教授ですが、4月からは放送大学にうつります。子どもの国の設計など数々の子どものための遊び空間をデザインしてきた建築家です。様々な建築関連の学会の会長も歴任している方ですね。
☆ずっとお会いしたかった先生だったのですが、この間やっと念願かなって、お話を伺うことがでました。仙田さんは、あくまで遊びの空間を話されるのですが、私にとっては遊びは学びに通じるので、先生のお話を変換しながら聞くことができました。
☆校舎や施設の中で、生徒たちは多くの体験をします。そして空間の仕掛け=プログラムが媒介して、経験値を高めます。しかもその仕掛けが多重構造になっているので、日々いろいろな発見があるわけですね。そういう建築デザインをしているかどうかは、学園生活をする生徒にとっては大切ですね。教育空間にいるだけで、体験<経験値となるか、体験>経験値となるかは、学校選択の時に見逃せないでしょう。
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