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首都圏 中学受験 2008 [76]

「心を揺さぶる授業 居場所づくりを支援する」(NTS教育研究所 2008/02/06)の著者松田孝志(明治大学付属明治高等学校・中学校)にお会いできました。この書は、いわゆる一般的な編集者による書ではないので、わかりやすくはないかもしれません。

☆しかし、今回は「わかりやすさ」はあえてとらなかったのです。わかりやすい本は、読んだ気になるし、わかったような気になるし、何より売れますね。ところが、現場で役立つことはほとんどないのです。なぜなら現場でもっとも大事な息吹や気概や信念や信頼といったコミュニケーションの作り方が書かれていないからです。本質とは関係性です。

☆ところが関係性とは、物象化されたものと物象化されたものを媒介する目に見えないコミュニケーションの力ですから、それはそれは難しいのです。

☆ところが、松田先生の書は、そこに焦点をあてて書いていますから、教師と生徒の心地よい緊張感の創りかたがわかります。しかも中高6年間の流れがわかります。

☆松田先生と話していて、キーワードが違うので、気づかない方も多いでしょうが、「ここには、カール・ロジャーズの手法もあるし、ハワード・ガードナーのコンセプトも螺旋として発展的に応用されているし、ダニエル・ゴールマンのEQやSQのコンセプトもはいっている。しかもそれらは、すべて溶け込んで松田先生のオリジナルになっているところがすごい」 ということを改めて確信しました。

☆松田先生の対話は、つねに1人ひとりの生徒とフラットな状態で耳を傾けながら、1人ひとりの興味や趣味を、探究のレベルにステージアップするところが特徴です。6年間で内省からはじまって、さまざまな体験を経験値にステージアップさせながら、対人関係の中で居場所をつくり、覚悟の拠点を形成します。この拠点があればこそ、公の中で自らの考えや感じ方を発信できるようになるのです。覚悟の拠点としての居場所は、あるときはシェルターにもなります、あるときは癒しの場所にもなります、あるときは自己沈潜の場にもなります、あるときは人間関係を形成する場にもなります。そしてなんといっても世界の痛みを共有する場にもなります。

☆こうして松田先生の6年間一貫の居場所づくりを支援するプログラムは、生徒の成長を促すのですが、先生と話をしていて互いに確認できたことは、その成長とは変容だということです。身体が大きくなるとか、大人として社会化されるとかいうことも成長ですが、なにより精神の変容なのです。

☆明大明治は、今年の春から西調布に校舎を移転し、生徒たちは新校舎で学びます。また共学校になり、男子校の精神を人間の精神に拡大しなければなりません。生徒の成長サイクルと同じように、明大明治も成長サイクルの循環の中にあるわけです。成熟期をどのように持続可能にするか。

☆それは生徒の人生のサイクルと同様、精神の変容・変質によってということになるのでしょう。松田先生をはじめ、明大明治の先生方は独自のプログラムを実施し、精神的に豊かに大きくなる生徒の存在を支えているはずです。その環境を明大明治はいかに持続可能にするか、ひとえにその見識にかかっているでしょう。

鈴木隆祐さんの新刊書「名門中学 最高の授業 一流校では何を教えているのか」(学研新書2008年2月6日)で紹介されている36校の1校に明大明治は選ばれています。期待がかかりますね。

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