学び野[26]白梅清修の戸塚先生の媒介性(了)
☆学び野[25]白梅清修の戸塚先生の媒介性②のつづきです。今年の清修の算数の入試問題で気になる点があったので、戸塚先生にたずねてみました。
本間)戸塚先生は、「清修としては、条件反射的に答えを出す力よりも、問題文に書いてある情報を丁寧に読み込み,それを式で表現したらどうなのか?・・・こういった、大切な情報を結びつけ、自身の考えを述べる思考力と表現力を見るようにしています」とおっしゃいましたが、その一つの例として、今年の入試で、数学の領域の計算問題を出題されたと理解してよろしいのでしょうか。
戸塚先生)今年度の大問2の問題のことを言っているのですね。その通りです。今年は、第1回の入試では、「累乗の計算」問題、第2回めでは、「三角比の計算」問題、第3回めでは、「行列の計算」問題を出題しました。
本間)いずれも計算法則を例示していますから、受験生は数学の問題だとは思わず、規則性あるいは通常とは違う計算ルールを読み解く問題だと思って解いたでしょうから、逆に思考力や論理力が見えたということでしょうか。
戸塚先生)そうです。「累乗の計算」では、計算法則を例示し、それに従って規則を理解し正しい結果を得られるかがわかります。「三角比」では、サインとコサインの定義を図解し、これを応用してsin(90-θ)=cosθ、cos(90-θ)=sinθの作り方を示し、その上で正しい結果を例を元に得られるかがわかります。情報を丁寧に読み解く力があるかということです。「行列」でも、計算法則を例示し、それに従って規則を理解し正しい結果を得られるかがわかります。
本間)まさに情報力、思考力、論理力の連関がポイントになるわけですね。しかし、例示があるから難しくはない。算数から数学の移行が、入試問題からスタートしているのも先生のアイデアならではですね。
戸塚先生)単に入学者を選抜するためだけの試験ではなく、受験生の段階から「へ~、なるほど」と思えるような知的体験を提起する機会をつくりたいと思っています。それから、教科どうしの連動だけではなく、教科内の連動の例でもあります。通常これらの学習範囲は高校1年~高校2年の間が主なのですが、これらは高校生でないと分からない代物ではないのです。基本的な計算能力と文章読解能力さえあれば解決出来る問題。大事なのはこの数学的知性と言語的知性の連動こそが、学年の壁を超える状況をつくるということなのです。清修の数学の授業の中では、中1でも必要に応じて大学入試問題も紹介しています。
本間)「この問題は高校で解くとか、大学入試だから中学では解けない」という先入観を常に崩す体験の機会をつくっているということですね。
戸塚先生)そうです。問題が解ければよいという発想ではなく、大事なことは考えることです。いつどんな問題に直面するのか人生なんてわからない。そのとき、私はまだ解き方を学んでいないから解決できませんでは、困ります。清修中学校に入学してから卒業までの6年間の中で、問題の解き方だけではなく、数学的思考力そのものを使えるようになってもらいたいと思っています。
本間)数学的知性とか数学的思考力とはどんなイメージをもてばよいのでしょうか?
戸塚先生)全ては独立した点ではなく、連結している線であり、隣接している面であり、結合している空間であるという発想、その第一歩が清修の入試です。
☆このように、戸塚先生と話をしていると、白梅学園清修の教育の通奏低音が身体中に響いてきて感動せざるを得ません。連動的とか横断的とか連関とか関係性とかいう言葉は、数学的知性あるいは発想がベースにあると、イメージしやすいということを改めて了解しました。
☆清修の一期生は、いよいよ中3。高校数学を学ぶ時期を迎えます。算数から中学数学へのシフトは終わり、中学数学から高校数学への新たな挑戦。しかし、そのシフトの準備はすでに中学入試のときから包含されていたとは、驚くべきことではないでしょうか。
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