世界を変える学校[06] 海城学園④
【世界を変える学校[05] 海城学園③ のつづきです。】
☆中田先生の「序」を読み進んでいますが、次の箇所では、「世界を変える学校」を探す視点の1つである中学入試問題について語られています。
今回の結果発表がある三ヶ月前の9月に一冊の本が出版されました。『世界標準の読解力 OECD‐PISAメソッドに学べ』(岡部憲治著/白日社)。この本の中で岡部氏は、PISAで問われている学力がどのようなものであるのか、また、なぜそのような能力が問題にされるのか時代状況に照らし合わせて分析されています。そうして、そのような能力を測るテストが既に日本でもいくつかの私立中学入試で実施されてきたことを具体例を挙げて示されています。実はその中で本校の社会科の過去問題が、OECDの設定するレベル5の批評的思考力だけではなく、それを上回るレベル6相当の「創造的思考力(クリエイティブ・シンキング能力)」をも測り得る問題であると紹介されているのです。
☆盟友岡部さんとは、いろいろな探究(学びとしてのテスト・授業・メディアなど)をしているのですが、「世界標準の読解力」を編集する際も実におもしろかったですね。最初はOECD・PISA対象が15歳で、中学入試は12歳。中学入試の方がおもしろいぞ、12歳で世界標準に達している子どもたちがいるから、そう落ち込む必要はないぐらいのノリだったのです。
☆PISAの尺度に合わせて、中学入試を分類したらそれが証明できると思っていたのですね。ところが、麻布や海城の問題を分析してみると、どうもPISAの設定に合わせるのは、プロクルステスのベッドだなと気づき始めたのです。
☆そこで、思考というのを、論理的思考と批判的思考と創造的思考という分類でやってみようと、すると中学入試の方はきれいに分類できたのです。PISAの設定は最高レベルが5の批判的(批評的)思考どまりですが、中学入試の方はそれを超えるレベル6の創造的思考まで突き抜けているという仮説が成立したわけです。
☆もともと学校選択指標によって分類した良質学校のことをクリエイティブ・スクールと呼んでいたので、やはりクリエイティブ・スクールである私学はレベル6の問題を入試問題で出題しているということにもなり、中学入試問題は学校選択の重要な資料であると再認識できました。
☆そして何よりクリエイティブであるということは、新しいイメージや概念を創ることでもあります。簡単に言うと新たな知識を創出することです。よく知識を記憶する学習は非難され、考えることが重視されますが、これは皮相的非難です。
☆かといって考えるにはその前提として知識が必要という通俗的ものの見方もありますが、これも違います。考えることとは知識の変容運動です。OECD・PISAのレベル設定は、その変容運動のステップを示唆しています。そして、海城学園のように、さらにそのステップを超える創造的思考の領域の入試問題を出題する私学があります。この創造的思考力こそ「世界を変える思考」です。入試問題は学校の顔と言われますが、海城学園の入試問題は、同学園が「世界を変える学校」であることを物語っているのですね。
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