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08全国学力テスト“04” 全国学力テストの分析をするワケ

☆ところで、なぜ「全国学力テストの分析」をしなければならないのでしょうか。文科省がやっているのだからそれでよいのではないかと言われてしまいそうですね。たしかに、そう言われてもしかたがありません。子どもたちの現状を把握し、改善していくのがなぜに悪いのかと。

☆しかしながら、この「全国学力テスト」は教育基本法の理念実現の手段として行われているのです。現行の教育基本法は、戦後の教育基本法を改正して成立したものであることは、言うまでもないでしょうが、それが何で、「全国学力テスト」に関係するのか。

☆ここらへんの説明は大変厄介です。ただ簡単に言えば、戦後の教育基本法は、≪私学の系譜≫というモダニズムでもポストモダニズムでもない未来からやってきた(ということは歴史のかなたからやってきたといってもよいのですが)教育のパラダイムに基づいてできあがっていたのです。それを捨ててモダニズム型の教育パラダイムに回帰したのが改正教育基本法ですね。もちろん私学を助成するよなんていう方向性も盛り込まれているので、私学の存在を明記してくれたんだから、大いに結構という方もいるんですが、これはちと浅薄ということになりかねないのですね。

☆2008年4月18日、中央教育審議会が、「教育振興基本計画について~『教育立国』の実現に向けて~」という答申案を公表しました。そこにはこう書かれています。

平成18年12月,制定から約60年ぶりに教育基本法が改正され,新しい時代の教育
の理念が明示された。同時に,改正教育基本法では,第17条において,教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,政府が基本的な計画(教育振興基本計画)を定めることが新たに規定された。本改正後,中央教育審議会では,文部科学大臣の審議要請を受け,平成19年2月から,教育振興基本計画特別部会を中心に教育振興基本計画について審議を行ってきた。・・・今後,本答申を踏まえ,政府としての教育振興基本計画が速やかに策定され,教育基本法の理念の実現に向けて着実な歩みが進められることを強く期待する。

☆とあるのです。中央教育審議会を前面に押し出し、背景で文科省が動いているわけですが、現行教育基本法の理念の実現のために、中教審が答申を書いていることは、当然ですが、明らかです。

☆さて、それでなぜ「全国学力テスト」が関係あるのかということですが、今回の答申にはこうあります。

○ 学力調査による検証

教育における検証・改善サイクルの確立に向け,児童生徒の学力・学習状況を把握するため,全国学力・学習状況調査を継続的に実施する。また,高等学校についても,多様化する生徒の実情を踏まえつつ,高校生の学習成果を多面的・客観的に評価する取組を進めるとともに,その結果を高等学校の指導改善等に活用することなどを通じた教育の質の保証と向上を促す。

☆なんと「全国学力テスト」は現行教育基本法の理念実現のための調査なのです。これは危ないんです。というのも日本のモダニズム教育は官僚近代社会がベースであること。その基本発想は「優勝劣敗」という富国強兵・殖産興業を生み出す教育なんですね。

☆≪私学の系譜≫は、川勝平太先生ではないですがどちらかというと「富国有徳」です。「どちらかというと」と断ったのは、≪私学の系譜≫に属する私立学校の中には「貧国有徳」というところもあるからですね。

☆それはともかく、およそ半分の私立学校は様々な理由をつけて「全国学力テスト」実施を拒否しましたが、本音はそこにあるのです。したがって、≪私学の系譜≫の立場からは、この「全国学力テスト」の内容や成績表の使い方などなどチェックしていかないと、子どもたちが「優勝劣敗」、つまり教育&経済格差の価値観に飲み込まれていく危険性があるからです。

☆OECD/PISAのモノサシを用いるのもそうです。「全国学力テスト」がOECD/PISAとは似て非なるものであること、むしろ真逆であることを示すことで、その危険なベクトルへ進むのを防ぐ意図があるのです。

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