不安を生みだす抑圧系[03]
☆前回紹介した「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方について反対している女子、男子それぞれの割合に、2006年実施のOECD/PISAの学習背景調査の別のデータを並べてみました。
☆それは、各国の校長先生に、保護者の子どもに対する学力期待の圧力を感じるかという質問の回答のデータの1つです。スウェーデンでは、ほとんど感じないと回答している校長先生は0%です。逆に言えば、学力期待を圧力だと感じている校長が他の国より多いということですね。
☆これだけ女性のポジションが高い国で学力期待を圧力だと感じている校長が多いというのはどういうことでしょう。ドイツはスウェーデンに比較して、感じない校長が多いわけです。
☆これはどういうことでしょうか。このデータだけではもちろん何とも言えないわけですが、圧力や抑圧に対する繊細さあるいは鈍感さの差異ということでしょう。少ないとはいえ、日本も鈍感な校長もいるということでしょう。
☆ただ、それより大事なことは、日本や韓国の場合は、女性のポジションは低いのですが、これはそのことを自覚しながらもあきらめているということをこのデータは示唆しているのではないでしょうか。圧力を感じることができる校長のほうが多いわけですから、「圧力はある。でもその圧力を受け入れるよりしかたがない」ということでしょう。
☆この圧力を正のエネルギーに転化したいものです。これは、女子校、そして実は男子校の教育の重要な役割です。一方、公立の共学校の場合は、どうしてもこのような日本の社会を受け入れる教育にならざるを得ないかもしれません。というよりこういう女性のポジションを作ってきたというべきでしょうか。私立の共学校は、この点において公立と大きな差異があるはずですが、それをうまく表現できていない可能性があります。公立と私立の違いは、共学校で明確に表現できなければ、大学進学実績以外の指標で、公立と私立の差異の認知を浸透させることが難しいですね。
☆大学進学実績を振り回すこともまた、抑圧的な表現です。私立学校のミッションからいって、このような言動は控えるべきでしょう。教育のプロセスの結果、実績は出るわけですから、そのプロセスを明快に表現したほうがよいのです。学校選択者も抑圧的な選択をするのではなく、教育のプロセスを丁寧に聞く姿勢が、将来の子供たちの成長にとって有益です。
☆どうやら教育の選択にも、意志決定の方法としての見識が必要のようです。
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