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世界を変える学校[15] 白梅学園清修の変化①

白梅学園清修の新学期が始まって一ヵ月が過ぎました。今年から中学全学年がそろいました。新しい先生方も増えました。校長先生も変わりました。これだけ条件に変化があれば、教育理念に変化はありませんが、クオリティに変化はでてくるはずですね。

Dsc07557 ☆とくに中3は、カリキュラム上の飛躍の時期(序破急の「破」の時期だと思います)です。あらゆる教科の中身が実は高校の内容にシフトし始めます。

☆中3は成長段階で言えば、思春期を通り過ぎようとしているでしょうし、一期生としての誇りはますます大きくなっているはずです。それに加え、学びの方法や思考のレベルが変わるのです。たいへんな時期ですね。

☆学校の成長サイクルから言えば、草創期におけるジャンプの時期を迎えているということでしょう。ここでクオリティをアップすれば飛べるし、そうでなければ失速です。柴田副校長は大胆にして細心の注意を注がねばなりません。

☆入学式以来久々に訪れたのですが、良い意味で緊張感がありましたね。でももちろん副校長室に訪れた数名の生徒さんたちとユーモアは忘れない。笑顔のある明るい学校であることに変わりはありません。

☆しかしながら、次へのステップに飛ぶ前の圧力は感じました。この圧力はしかし外からのものではなく、生徒一人ひとり、教師一人ひとり、保護者一人ひとりが自ら生んでいるものです。

☆この圧力を抑圧に転化させるか飛躍のエネルギーに転化させるかが、今の白梅学園清修の課題だと感じました。私自身のワークの大きなテーマは、学びのプログラム、組織のマネジメント、人材育成、教育市場のマーケティングなのですが、すべての点において、いつも白梅学園清修の先生方にアドバイスを頂いています。

☆そしていつも感じ入るのは、とりあえず私もいろいろな机上の理論を読むのですが、清修の先生方はそんな理論を読まずして、まずは実践して成果を上げているということですね。

☆古典的な戦略ですが、現在もポジショニング戦略というのは有効であることはご承知だと思うのですが、最近その古典が翻訳されています。その中に、「私たちは今、人類史上初の情報社会に生きている。発信される情報もコミュニケーション手段も増える一方だ。しかし、それらはうまく機能していない。問題なのは、コミュニケーションに費やす時間でも量でもない。『どのように』コミュニケーションをとるか、なのである。」(この部分の訳は訳者の相当な力量で翻訳されていますね。コミュニケーション<そのもの>が問題だというのを明らかにする必要があるぐらい重要なんですね)とあります。

☆ともあれ。この部分を読んで、まさに清修は学内にこの情報社会そのものを内包している先進的学校なんだと改めて感じました。おそらくここまで情報社会をICTによって取り入れている学校はほかに例を見ないでしょう。しかし、この点について世の中にまだまだ認識は広まっていませんが、時代を見抜く経営者がいる学校はどんどん清修に見学に来ていますね。この間も、これから行こうと思っているとある有名男子校の先生が語っていました。

☆さて、なぜ他の学校は導入しないのでしょう。それはうまく機能させるのが難しいからです。コミュニケーションの質をどうやって作っていくのか難しいのです。というのも伝統的な学校は、すでにコミュニケーションの型が出来あがっていて質を変化させるコト自体難しいのです。

☆白梅学園清修はその点新しい中学です。そこをはじめから大きな問題として認識していますから、コミュニケーションの質を一刻一刻目配りしています。中3自身自分の内部からも後輩からの期待からも保護者の期待からも圧力を受けます。それらを飛躍のエネルギーとして転化させるには、ただ「がんばれ!」と励ましてもだめですね。それはむしろさらに抑圧することになります。

☆大事なことは生徒一人ひとりの小さな課題から大きな課題まで共有するところから始まります。共有するとは課題が明らかになることです。たいていはこの時点で飛躍への光がちらちらします。もちろんすぐに暗雲はたちこめます。だから共有し続けるコミュニケーション・システムが重要なのです。ICTが威力を発揮するのはこの点ですね。

☆しかし、一方でスチューデント・ブックという生徒と担任の交換日記のようなシステムがありますが、これが最も重要です。中3ではこのやりとりが今盛り上がっていると聞きました。生徒の方が、先生こんなにコメント書いてくれて身体大丈夫なのとケアしてくれる場面もあるほどだということです。少人数クラスの運営の大きなメリットではあります。こういうコミュニケーションのクオリティアップの変化が随所で起きているというのが今の清修です。

☆もちろんパラドックスでもあります。コミュニケーションのクオリティがアップするには、課題が散在している必要があります。課題にていねいに回答していく対話していく議論していくという過程が質を向上させるのですから。

☆それにしてもやはり先生方はお身体はくれぐれも大切にしていただきたいと思います。

*写真は柴田副校長室から窓越しに見える景観。新校舎に花が咲いています。この花をケアする教職員・生徒の存在が伝わってきますね。この場所こそ副校長と生徒の対話の居場所です。

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