学び野[27]究極の授業の勉強会始ります。
☆2008年5月19日(月)、中村中学校で、究極の授業の勉強会「The 授業 リンク」の第一回の集まりがあります。参加申込みは締め切られ、参加者は60名弱と聞き及んでいます。私立の先生も公立の先生も参加するようです。またマスコミ関係者、ジャーナリストも多数参加の予定だということです。2001年から私学の先生方が行ってきた勉強会CALの発展形です。一方、世の中は、やっと脱ゆとり路線で変わろうとしています。あるいは全国学力テストの結果分析で、教育における何かを変えようという動きが今というより今ごろ始まっています。
☆そして、何を変えたらよいのかというと、結局言葉力やコミュニケーションであり、その総合的な活用の場である授業であるということのようですね。そういう意味では現行の学習指導要領の開始時点で、私学の先生方は、すでに、本質的な授業の在り方を確立し、世に問わなければという危機感と使命感を持っていたことになります。
☆今回CALからThe授業リンクにシフトするのは、現行学習指導要領の総合学習がたんなる体験学習で、見識、知の塊、人間形成といった本質的な部分を忘却する可能性があるという危機意識が、新学習指導要領では和らぐどころか、さらに深刻になるという反動的な教育行政の在り方にますます危うさを感じたからでしょう。
☆いずれThe授業リンクのサイトが立ち上げると思いますから、詳しくはそちらをご覧いただければよいのですが、この会の発起人である、京北学園の川合校長、共立女子の渡辺教頭、中村中の小林理事長・校長の立ち上げアピール文を紹介しましょう。
〔The授業リンク〕の発足に寄せて ~もっと授業を~
【いまこそ授業の充実を】
《The授業リンク》という研究会が発足します。それは、学校で子どもたちを生き生きさせ、学習の効果をあげるのは「授業力」であるという視点からの発信です。その前身の「21世紀型学習研究会CAL(Center for the Advanced Learning)」は2001年から活動を続けてきました。「子どもたち1人ひとりの才能、創造力を引き出し伸ばしていく仕掛けや仕組みは、学習プログラムにある」という発想で、首都圏の私立の中学校、高等学校の教師仲間たちとそれぞれの「授業」を軸に研究を続けてきました。
【国際社会の中での日本の子どもたちの学力】
しかし、21世紀の日本の教育はその後、決して良い方向に推移してきたとは言えません。2007年12月4日、日本記者クラブでのOECD事務総長アンヘル・グリア氏のスピーチは、我々が危惧していた教育への不安を明確に指摘していて衝撃的でした。日本の教育で子どもたちは、
※ 初めて出会う状況で、知識を応用する必要がある場合、困難に直面する。
※ 彼らは将来の労働市場に出たときに必要とされるスキルを身につけていない。
※ 文章情報を取得し、処理し、統合し、評価することが、最大の課題。
※.科学が自分の人生に機会を与えてくれると考えておらず、自分の将来という観点 から科学を学ぼうとする動機づけが弱い。
※ 多くの日本の若者が環境問題について平均よりも高い楽観意識を報告している。
※ 科学関連の活動への女子の参加率は特に低い。この点は教育政策上の重大な懸念事項。
であると言うのです。わざわざこんな辛辣なことを言いに日本まで来たのかと驚いてしまいましたが、これはEU社会から日本への温かいメッセージであると受けとめたいと思います。
【教育関係者の使命】
我々教育に携わる者は、日本の未来を担う子どもたちのために躊躇しているわけにはいかなくなりました。子どもたちを活かす教育を真剣に考え、模索していかなければなりません。その思いに賛同した仲間たちと、この会を発足することになりました。その理念は、
授業で人間関係・社会関係をつなぐ感性と知性を養い、授業から世界の痛みを感じ、 解決するアイディアが生まれる。この、授業に挑戦する理念共同体(「利益共同体」 と対義。思い・願いに賛同する者が集う意)が“The授業リンク”。教科授業にはとらわれない。
と今現在では考えています。勿論、研修がつづく中でさらに参加者と共により高い理念へと発展させていけることを願っています。
【授業が変われば、日本が変わる】
具体的には、1人ひとりの生徒が人間や社会と関係を結べる感性と知性を自己陶冶できる居場所づくりをするために、丁寧なコミュニケーションに基づくThe授業に挑戦していく。体験・探求・議論・発表・編集を創意工夫して組み立てることによって、1人ひとりのモチベーション・好奇心が生まれる授業および考える時間・表現する時間を大切にする授業の仕掛けについて、それぞれ違う学校に属しながら情報交換し、必要な時にはコラボレーションして新しい授業のプログラムを作っていきたいと思っています。
教育に携わる多くの人が、この理念に賛同され参加されることを願っています。
☆第一回目の講師は、明治大学附属明治中学校の松田孝志先生です。タイトルは「居場所づくり授業への挑戦 ―リード・ウォーキングからドッグ・ランへの試みー」です。松田先生からのメッセージもご紹介します。
「君が一番手だよ!虎の穴へようこそ!」
[The授業リンク]の最初の研究会発表者に指名されて、武者震いしています。それは、この場を企画した方々の志が高いこと、教育現場の現実に翻弄されながらも将来の日本を見据えて理想の旗を振り続けていることを知っているからです。子どもたちを「育てる」ことにこだわり、自分たちの腕・感覚を磨くだけでなく、後に続く人たちに“ぶつかり稽古”の場を提供して下さっているのです。“人生意気に感ず”私は、諸先輩から受け継いだものに自分の持ち味を加え,それを多くの方々と共有・分かち合いをしたいと思っています。講義形式の授業にアクティブな授業を組み合わせることで、子どもたちが「学ぶことの快感」「自分には持ち味がある」「Only oneの自分であると同時にOne of themの自分である」を実感し,そして「その過程で多くのスキルを身につけてもらいたいのです。今回の<「居場所づくり授業への挑戦」―リード・ウォーキング授業からドッグ・ラン授業へ―>は、関わりの中で知識に習得・事象に理解の次のステップへ誘うジグゾー法によるグループワークを体験していただき、それを活用する試みに挑戦したものです。「とりあえずやってみる!」という気持ちです。さぁ,“ぶつかり稽古”をしましょう!*松田先生の最近の著書
☆大阪府の指導主事も自らモデル授業を行っているそうです。The授業リンクの先生方の活動が本質的な授業の広がりに影響を与えるのではとワクワクしています。授業が変われば、世界が変わります。これが本来の教育改革の在り方ですね。改革は常に現場という最前線から生まれます。授業のビッグバンの予感がします。
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