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学び野[35]なぜ松田先生の授業がターニングポイントなのか(了)

☆第1回The授業リンクの講師松田先生の授業について、つれづれなるままに考えてきましたが、まずはいったんまとめましょう。そして、今度は松田先生と議論して、また考えていきたいと思っています。もっとも、松田先生は、お忙しいですから、いつ議論できるチャンスが訪れるかは神のみぞ知るですが^^)。

☆さて、今まで書いてきたことを箇条書きにして、まずはまとめてみます。なぜ松田先生の授業はターニングポイントに立っているのか?という問いに対する回答ですね。

①日本の公教育が到達していない世界標準の思考レベルを超えている。

②異文化を理解するコモンセンスとしてのコミュニケーションの成立。

③商品化された多元的なキャラに気づき、自分の多面的なキャラと自分のキャラクターの統一に挑む居場所の成立。

④他者の考えや感じ方を知り自由な足場としての居場所づくりの成立。

⑤教育の質の競争を生みだすResonant Leadershipの発揮。

⑥授業の新たな組織づくり。

☆今まで書きたかったことは以上のような理由です。①と②については私よりもむしろ岡部憲治さんの方が、論理的に詳細に分析していますので、そちらをご覧ください。

The 授業リンク -松田先生の授業 - 了

☆①から⑥の項目を満たす授業が、もし多くの先生によって行われるようになったとしたらどうでしょう。想像してみてください。

想像・想像・想像・・・・・・・・・

☆どうです。世界は変わるということが了解できたことと思います。しかしです。この授業はコストがかかるんですね。今のところ松田先生は完全にボランティアでやっているわけです。企業家が見れば、それはありがたいスタッフですが、このスタッフのクオリティをどう維持し、広めていくか考えるでしょう。もし強い信念を持った経営者やオーナーであれば、プライスの決定を高めに設定することは間違いありません。目先の利益しか考えない経営者やオーナーは、事業化はしないでしょう。

☆さて、学校経営においてこれを当てはめるとするとどうなるのでしょうか。このような授業をやらない理由は、本当はただ一つなのです。経営上の問題です。明大明治の授業料は年間52万円前後です。これに補助金が出て、1人当たり80万円から90万円ぐらいの授業料を払っていることになりますかね。あくまで予想に過ぎませんが。慶応普通部は授業料だけで90万円弱です。

☆慶応普通部だって、すべての先生が松田先生のような授業をするわけではありませんが、松田先生の授業の一部分はどの先生も実施します。コラボとプレゼンは当り前だと思います。明大明治はどうでしょう。たぶん全員ではないと思います。その差は結局帰属収入の差なのです。

☆帰属収入の60~70%が人件費だとすると、授業料だけでは人件費は賄えないでしょう。そうすると学内に倹約の圧力が無意識のうちに生まれますね。倹約の圧力は、創造性を萎縮させ、事務的になります。その状況を脱しようなどという動きになると出る杭は打たれるということになるのは必然の流れです。

☆ところが明大明治は、ホームページで松田先生の授業を明大明治の授業として自己表現しているわけですね。これは革命的なことなのです。ターニングポイントの意味は、教育の論理のチェンジだけではなく、経営の論理のチェンジも示唆しているのです。

☆もし松田先生のような授業を、すべての先生が行ったら、授業料をアップするしかないのです。新商品を作って儲けることは法人型NPOである学校法人にはできません。帰属収入で経営していくしかないのです。倹約倹約で先生方にがまんしてもらうか、先生方のクオリティの高い授業にリーズナブルな授業料を投資してもらうかどちらかです。

☆不足知識を埋め合わせするような講義型授業をやり続けているのに、授業料をアップせよは保護者は納得しません。しかし、4:1の割合で、講義型と松田型の授業を実行したなら、年間授業料を60万にするのは保護者は了解するでしょう。

☆2:1の割合でやったのなら、年間授業料80万円にしてもよいでしょう。松田先生の授業が、なぜターニングポイントに位置しているかというと、教育の論理と経営の論理のパラダイムを転換させるからです。

☆このシーズンは、各学校で理事会が目白押しでしょう。理事会には学校長以外に企業のオーナーや学識者も入っていると思います。彼らは授業の中身なんてわからないので、授業で経営ができるなどという発想をほとんど持ち得ていません。これが日本の教育の本当の悲劇であり、隠蔽され続けてきたリスクなのです。

☆彼らが、社会起業の精神や市民経済の精神を理解するにはもう5年かかるでしょう。そのときまで、松田先生のような授業に理想と夢を持ち続けてもらうには、コミュニティが必要です。その一つがThe授業リンクなのだと思います。

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