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私学の経済ポジショニング[02]端緒を探る②

☆私学の経済ポジショニングとは一体何を言いたいのか?と言われるかもしれない。それはシンプルで、私学の教育や授業が、今後の経済社会に大きな影響を与える位置を占めるということを意味している。

☆私学の系譜をたどれば、そこに経済社会の未来は見える。逆説的だが歴史を学べば、過去に未来が見えるのである。明治維新の後、たくさんの近代化路線の選択肢があった。そのうち明治政府が選んだ路線は、優勝劣敗路線。格差問題が今騒がれているが、20世紀近代日本の出発時点で、すでにセットされていたのである。

☆この政府の近代教育路線の格差の象徴的な側面の1つが、女子教育である。東京女子学園の理事長・校長であり、東京都私立中学高等学校協会副会長の實吉幹夫先生は、明治の中等教育について、こう語る。

「明治維新の後、近代国家への脱皮を急いだ明治政府は、欧化政策のもと社会基盤の整備を図る一方、教育制度を充実させていった。その一つに『高等女学校令』があったが、中等教育以上の学校制度は、男子の教育を中心としたものであった。日本社会の近代化に伴い、女性の活躍の場が徐々に広がり、女子教育の重要性を痛感した先覚者たちが、戦前まで多くの私立高等女学校を開学していった。」(「『女子校』の存在意義」元気な女子校 創刊号 所収)

☆明治の近代化の出発点で、もっとも顕著な優勝劣敗は、男女の格差であった。この格差は、戦後の共学校の出現、また最近の男女共同参画の動きで解消されたかのごとくであるが、実際には女性の組織におけるリーダー的役割の進出がまだまだ阻まれているところからもわかるように、解消などされていないのである。

☆女性の地位向上がどうのこうのというより、男女の格差という問題を根本的に解消する価値観がそもそも明治以来希薄だったのだということこそ重要な問題意識であり、そのことを忘却せず、男女の格差にとどまらず、この格差問題が生みだしてきた大量生産、大量消費、大量移動による人間環境破壊をどのように解決していくかが、實吉先生の語られる「女子校の存在意義」なのだと思う。

☆私学は、明治維新からすでに、政府の優勝劣敗近代路線とは違う、もう一つの近代路線を選択し、それを教育理念に内包し、私学の文化資本再生産を持続可能なものとしてきた。この私学の文化資本こそ、日本社会の経済システムを組み立て直す源泉となり得るのである。

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