私学の経済ポジショニング[09]私学経営研修会に参加して<03>
☆「私学の経済ポジショニング[08]私学経営研修会に参加して<02>」のつづき。レジュメの§2≪私学の系譜≫を考えるについて、
●「近代化の矛盾=問題=圧力→学歴・経済・知・人間性の格差」をどのようにとらえるかの系譜
☆この項目では、私学の歴史性の問題の確認をしたかった。物理的時間で過去の歴史に遡ってみると同時に、現代でも同根の問題性を私学は持っているという確認。これによって、単純に歴史年代的に古い学校が伝統があるとか、新しい学校は私学の系譜に属さないとかいうことではないことを確認したかった。
☆歴史年代的に古くても、単に設置者の関係で私立学校にすぎず、≪私学の系譜≫ではない場合もあるし、仮に公立学校出身者でも、≪私学の系譜≫と同根の問題性を有している人物は、≪私学の系譜≫の仲間である。
☆さて、その同根の問題性とは何か。それが、近代の矛盾を大量生産・大量消費・大量移動で逃走するのではなく、つまり学歴・経済・知・人間性のあらゆる格差は近代が産出する運命的な問題で、解決不可能であると居直るのではなく、寛容にも真摯に受けとめ、痛みを分かち合い、なんとか解決しようとアイデアを出すための議論をし続ける関係性を重視する立場である。
☆それゆえ明治政府の官僚近代化路線は、私学人福沢諭吉、江原素六、新島襄には受け入れがたかったし、江原素六などは、相当官僚から圧力をかけられ続けた。この官僚近代化路線が富国強兵・殖産興業の路線に進化していくのであるが、この立場に疑問を投げかけたのがこの第一世代の私学人であり、ここに≪私学の系譜≫のルーツがある。
☆その後、東大の初総理加藤弘之のダーヴィニズム路線、つまり加藤は啓蒙思想を捨て、社会進化論者になり、官僚近代化路線の正当化理論を推し進めるのであるが、それに第二世代の内村鑑三、新渡戸稲造、石川角次郎は反発した。
☆彼らの思想は第3世代に継承される。南原繁、矢内原忠雄、河井みち、務台理作・・・。戦後の教育基本法成立にかかわったメンバーである。河井みちは恵泉を、務台理作は桐朋の基盤を築いた私学人でもある。
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