世界を変える学校[35]中村中は社会起業家が育つ土壌
☆中村中のブログ「中村日記」で、≪CFEP企画:企業研修会「サントリー株式会社」≫の様子が公開されています。CFEPとは、中村100プロジェクト活動の一環の中で生まれた在校生たちによる自発的チームで、“Change Future Ecology Project”の略です。
☆第3回目の企業研修とありますから、活動は持続しているのですね。こういう外部ネットワークとコラボすることは、意外と手間暇かがかかります。プロジェクトチームの活動の中で、このバックヤードの仕事・ロールプレイを体験できることは大変価値あることです。
☆どんなに賢くても、どんなに才能があっても、それを実行する力を持っている人材は少ないのですね。だから日本ではキャリアの選択の段階で、選択肢が単純なんです。いろいろな職業の選択の自由が保証されているように見えますが、それがそうではないのです。利益共同体か理念共同体かという選択肢と雇用する側か雇用される側かという選択肢がほとんどです。
☆起業しようという選択肢は最近では多くなってきましたが、まだまだです。しかも企業の場合、利益共同体が多く、社会起業のような理念共同体を形成する動きはもっと少ないですね。
☆グローバルには、この社会起業を形成するボランティア精神に富んだ人材はたくさんいます。クリエイティブ・クラスと呼ばれている人です。マイクロ・ファイナンスという社会起業を創設したムハマド・ユヌス氏が、ノーベル平和賞を受賞したのは記憶に新しいですね。
*私は、NPOやNGOの活動も含むもっと広い概念で、社会起業という言葉を使っています。
☆ともあれ、そういうキャリアを選択するには、すでに出来上がった組織を選ぶのではなく、新しい組織を作ろうという行為を選ぶわけです。そのための「熟練」システムは、現在の日本の教育にはないのです。
☆ところが私立学校である中村中は、もともとボランティア活動が自主的に行われてきたこともあって、起業家精神を養う土壌があったのですね。
☆だから、外部ネットワークとつながることができるわけですし、そのためのバックヤードの混沌とした状況をなんとかうまくマネジメントして実現に到ることができるわけです。研修の度に、外部の団体が違うので、実はこのやりとりにはマニュアルがないのです。起業家にとって最も重要な能力は、未知との遭遇をどのように解決していくかという問題解決の仕方を創出する問題解決能力で、マニュアル化された似非問題解決能力とは似て非なるものです。
☆そしてこういう活動には、必ず目に見えない贈り物がつきものです。ブログによると、
講演の中で「プルタブで車いす」は無意味と話をされたので、そのことについて生徒から質問が出ました。「本校では全校でプルタブを集めているが、どうして無意味なのか教えてください」と。
☆試行錯誤という体験、当り前だと思っている前提の崩壊を実感などなど本物の思考力を社会の最前線の活動を通して学べたのです。
☆中村中のステークホルダー戦略は着々と進んでいます。塾側は学校にB2B2Cだという企業の論理を押し付けてきます。だから、多くの私立学校は、塾対象説明会をします。これはこれで問題がないのですが、塾・予備校の再編&統合の動きが、ますますこの圧力を強化する恐れもあります。
☆そのためには学校はB2Cのステイクホルダーネットワークを最優先して形成しておかねばならない時代がやってきました。B2C、B2C2Cという社会起業的ステイクホルダーネットワークこそ未来の私立学校の姿です。その先がけの象徴がCFEPの活動です。
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