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世界を変える学校[36]武相は男子の理想郷

☆本日(2008年6月29日)、2008学校フェアが行われました。会場は、早稲田大学と慶応大学(三田)。参加校は自分のエリアに近い方を選ぶのですが、副都心線や湘南新宿ラインなどの開通が、空間を超えて学校を選択できるようになってきたために、両方の会場に参加する学校もありました。武相もその1つです。早稲田大学の会場にも参加されていました。

☆「外見れば、若葉豊かな 武相中」 これは在校生の作品ですが、たしかに東急線の妙蓮寺の閑静な丘の上にある男子校なのです。池袋や高田馬場、経堂、二子玉川などから1時間で通学できます。

☆同校の教育の質は高いにもかかわらず、あまり知られてきませんでした。どうしても大学進学実績や偏差値という基準が阻害してきたようです。しかし、質が高ければ、結果として二つの基準はアップしてきます。学校当局としては積極的にPRすることはないのですが、やはりその教育力に魅力を感じる情報センター系の外部スタッフが、いろいろなデータを駆使してプロモーションしてくれるようです。実際、大学進学実績も偏差値もアップしているわけですから、放っておいても、いずれ受験生の目に触れるわけですが、よい学校はよい学校ですから、できるだけ速く多くの人に知られることに異論はないでしょう。

☆そもそも武相の先生方は、生徒の活動の話で盛り上がり、自分たちがどんなことをやっているのかという話題は、こちら側が質問しないと語ってくれません。しかも野球部の生徒たちが、試合でどのように活躍したかという話でもなく、彼らが行った先で、どのように褒められ尊敬を受けたかという話を、こんこんと語るのです。

☆修学旅行に行ったら、あまりに聞く姿勢がすばらしいので、すっかり気をよくした語り部が、ふだん公開しない秘密の場所まで連れて行ってくれてお話を聞かされたというような話を目を細めて語るのです。

Buso ☆武相といえば「テッケン」です。こわそうな言い方ですが、もちろん違います。鉄道研究同好会のことを指しています。筋金入りの鉄道研究会で、全国に名が知れています。鉄道が好きな生徒であれば、世界でも東京だけという電車網を毎日楽しみながら遠くからでも通うほどです。

☆この「鉄研」のメンバーは、たんに電車が好きだとか、時刻表に興味があるというだけではないというのですね。たしかに、「鉄研」が主催で、企業の後援を得たりして写真展の企画まで実施してしまうほどの起業家精神であふれているわけです。

☆「鉄研」の活動は、大きな企画では、チームプレイを発揮しますが、もともとメンバー1人ひとりが自分のテーマを持っていて、個人でもフィールドワークを楽しめる自立した学習者だそうです。

☆ここが実にポイントですね。このような自立した青少年の成長は、何も「鉄研」のメンバーに限ったことではないのです。武相の伝統でありハビトゥス(文化資本の再生)であり、文化遺伝子なんですね。

☆それを象徴するような活動が行われているのが、たとえば「鉄研」だということなのです。そしてこのハビトゥスの持続可能を実現するプログラムが、中学時代の「1クラス25人制プログラム」なのです。

☆2004年に構築・実施して5年目を迎えていますが、すでにその成果はあらゆるところで出ているということです。しかし何といってもすばらしいのは、思春期を乗り越えるプログラムになっているということですね。それから教師と生徒、生徒どうしが尊敬し合え、それがゆえに自分が社会に対して何ができるかをそのミッションや役割を武相で見つけられるということです。

☆「鉄研」のメンバーの中には大学卒業後、鉄道関連の雑誌の編集スタッフとして即戦力で迎えられる卒業生もいるほどです。Suicaのエンジニアとしてたいへんなタレントとテクノロジーを発揮している卒業生もいるということです。

☆他者を尊敬し、自分が社会に対し何ができるのか、そういう自分をしっかり持つことこそ高い倫理観を持つことです。最近青少年に関して、自分を見つけられない、ロールモデルとしての他者を受け入れられない・・・などということが問題になっているし、実際多くの凄惨な事件も起きています。

☆中等教育段階で最重要な課題は、自律・自立・自分・尊敬・倫理・・・ということでしょう。アイデンティティの確立ということなのでしょう。進学指導重点校のような教育は予備校や塾でできてしまいます。しかし、自分らしさを確立し、他者と自分の関係を考えながらクオリティ・ライフを形成することは、受験勉強ではなく、教育においてしかできません。

☆そんな当たり前のことを喪失しているのが今の時代です。久しぶりにお会いできた藤田先生と神保先生の話に耳を傾けながら、武相がいかに理想郷であるか、改めて感じ入りました。

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