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The 授業リンク@考[01]

☆私学の先生方を中心に始まった授業の勉強会「CAL」は、私立公立問わず、またマスコミや各教育関連企業も参加できる「The 授業リンク」に発展しました。

第1回めの「The授業リンク」では、講師松田先生のジグソー法の授業体験が行われました。その様子は「The 授業リンク」のホームページで紹介されています。また岡部憲治さんもお節介にもつれづれなるままにコメントを書いています。

☆しかし、まだ本格的に議論が広がっているわけではありません。お得感や教師にとっての効能、各企業におけるお役立ち度については、質疑応答されていますが、松田先生の本意である子どもたちの居場所知の形成については、議論がされませんでした。今後は実践的とか現実的とかいう言葉に惑わされず、実存的な議論が展開されることを期待したいと思います。

第2回目は共立女子の池末和幸先生による体験型授業が行われます。テーマは 「カードゲームを用いた国際理解」― 「参加体験型」で授業を活性化 ― です。興味深いのは、池末先生のメッセージです。「The 授業リンク」が乗り越えなければならない教育の大きな課題=壁が問いかけられているからです。

前任校での話です。私が青年海外協力隊に参加していたことを、どこからか聞きつけて訪ねてきた、ある中学校の先生がいました。要件はというと、中3生が残していった体育館シューズを途上国に贈りたいのだということでした。そこで私はこう答えました。「入学してくる中1生に譲ったらどうでしょう。もちろん、お金は払ってもらってですよ。その代金で途上国の産品を適正価格で買ったらどうでしょうか?」するとその先生は血相を変えて怒り出し、「新入生に中3生のお古とは、とんでもないことだ。私が欲しいのは、途上国にモノを贈ったという証拠の書類なのだ。義援金を銀行に振り込んだだけの振込書では、生徒の励みにならないのです!」私は開いた口がふさがりませんでした。こんなトンチンカンな話は山とあります。つづきは当日に。

☆「The 授業リンク」が乗り越えねばならない教育界の壁が明快に語られていますね。途上国の子どもにとって何が本当に必要なのかを日本の子どもたちといっしょに考えていくコミュニケーション能力が求められているのに、「モノを贈った証拠づくり」のための活動という教師の自己ヒストリーのための教育や授業になっては困ります。

☆「The 授業リンク」の場も同様です。教師のスキルアップや教育関連企業の利益のためだけの場にならないようにしなければならないでしょう。それにはマザーテレサのような目線が必要ですね。池末先生は、すでにそのことを感じていらっしゃる。松田先生もそうです。事務局の先生方もそういう気持ちで一杯です。本物の教師とは、世界の痛みをいつも感じているのだと改めて感じ入り、2回目の「The 授業リンク」の会に参加するのが今から楽しみです。

☆それにしても「適正価格」!この問題は13世紀中世ヨーロッパ以来の大問題です。その時代はすでにグローバルな時代で、都市の基準と世界の基準がマーケットでぶつかりあっていたんですね。「適正」という基準について、どう解決するか。シュンぺーターもここに資本主義の萌芽を見出しているほどです。イノベーションの光と格差の闇のジレンマ問題も同時に生まれることになるのですが・・・。

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