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私学の経済ポジショニング[12] 東京私立男子中学校フェア研修会に参加して[01]

☆2008年6月7日、新宿で23校の男子校が集結して「東京私立男子中学校フェア2008in新宿」を開催したが、その振り返りと来年の活動についてミーティングが先日あった。その中で私もスピーチするチャンスをいただいた。

☆このコミュニティを支えてきた人物は、攻玉社の教頭を経て本郷中の校長として活躍された高橋先生。2005年5月12日、大井町きゅりあん(品川区民会館)で、東京の私立中高一貫校15校が協働開催した私立中学合同説明会「夢限大」で、高橋校長は講演をされていた。そのときの様子を私もこう書いている。(参照→21世紀に広げよう、私立中高一貫教育「夢限大」

高橋校長先生は、社会性と社会力の差異に注目した。社会性は、社会に順応することである。社会に順応するというのは、実は個人主義的な側面でもあるだろう。一方社会力とは、社会を変える力だという。社会性は、その社会システムの信頼性や正当性に対する批判をすることなく順応することも可能だが、今のように社会システムが明らかに正当性や妥当性を有していない事態に対し、どのように社会を変えていくかその力をつけることこそが私学教育の肝だと主張されたと私は理解した。・・・ しかし、それはある意味孤高であろう。社会を変えるタフな人材作りを本気に考える現場の先生はどのくらいいるのだろうか。もしかしたらそういう危機意識を(高橋校長は)吐露されたのかもしれない。いずれにしてもこればかりは、強いリーダーシップが必要である。高橋校長先生のおっしゃる私学の心の教育は、他者の気持や状況を思いやるイメージネーションを豊かにすると同時に、社会を変える発想と論理を備えたタフで機敏な頭脳を鍛えるということでもあろう。

☆それゆえ、今回のスピーチのタイトルは、高橋校長に敬意を表して「私立男子中高一貫校は、何を変えるのか?」とさせていただいた。しかし、だいぶ背伸びしたテーマで、かえって高橋校長にはご迷惑だったかもしれない。

☆しかし、私にとっては、たいへん大きな収穫があった。かつて、高橋校長が社会を変える人材を輩出したいとビジョンを語ったことに対して、私は「しかし、それはある意味孤高であろう。社会を変えるタフな人材作りを本気に考える現場の先生はどのくらいいるのだろうか。もしかしたらそういう危機意識を(高橋校長は)吐露されたのかもしれない。」と書いたが、これはある意味あたっていたという確信を持てたことがそれである。

☆「ある意味」というのは、高橋校長は私立学校全体の問題として危機意識を持っていたし、私立学校の教師がすべて社会を変えるビジョンを持っているわけでもないという考え方もしていたということを意味する。

☆つまり、集結していた男子校の先生方の共通のビジョンは、社会を変えるという強烈な意志をもって、未来を創ることができるのは男子校の使命であるということなのだ。男子校にしか創れない未来、女子校にしか作れない未来、共学校にしか作れない未来があるという認識をしっかりもっているコミュニティが、「東京私立男子中学校フェア2008in新宿」を開催していたのだと確信した。

☆そして、男子校と女子校がそれぞれ創る未来は相互補完関係にあり、共学校もそうであるはずだが、そのことに気づいている共学校があまりに少ないということにも気づいた。おそらくこれが高橋校長の警鐘なのではなかったか。

☆しかしながら、当時の「夢限大」は、男子校も女子校も共学校も協力し合っていたので、そこを直接言うことは、受験生の保護者に動揺を与えてかねなかったので、レトリックに徹して語られたのだと思う。

☆したがって、今回のような男子校のみのコミュニティにおいてこそ、そのビジョンが明快に語られるのだと感じいった。しかし、この男子校にしか創れない未来、女子校にしか創れない未来、共学校にしか創れない未来は何なのか、私立学校自身が明快にしなければ、学校選択者はリスクを抱えることになる。こんなはずではなかったということになりかねないからである。この男子校のコミュニティは、そこをも明快に表現する先駆け的なポジショニングを占めているわけで、そこがとりわけ興味深い。

☆ただし、開成、麻布などがこのような男子校のビジョンづくりをしているコミュニティに協力参加していないというのはなんとも寂しい。≪私学の系譜≫をアピールする上でも、広く男子校のコラボレーションは重要である。東大を頂点とする知の鉄鎖をぶち切る知の自由が社会を変える。それは≪私学の系譜≫の大きな柱の一つであるはずではないか。

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