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世界を変える学校[39]東京女子学園のクリエイティビティ②

世界を変える学校[38]東京女子学園のクリエイティビティのつづきです。第2回「The授業リンク」の会に、国際教育研究家の岡部憲治さんも参加していたので、今回の東京女子学園のDSの授業導入について自然と対話になりました。岡部さんはもともとDSなどゲームやインターネットの学びへの導入が、創造的な人材を育成できるし、少子化日本にとって勝機をつくることになると考えています。

*詳しくは)→ニンテンドーDSで「進研ゼミ」 。。。 どんどん進む、日本発の学習スタイル

☆もちろん、私たちにとって、日本が国際舞台で勝ち組になるかどうかなんかは、全くどうでもよいことで、大事なコトは、日本の創造的な技術を、世界のすべての子どもたちにシェアできるチャンスだということです。そのチャンスが、日本の国にとってどのような政治的あるいは文化的な成果をもたらすかは、それぞれが考えることで、大事なコトは貧富の差や様々な格差を解消するツールが進化することはよいことだという、まったくアダム・スミス的な、あるいはカント的な発想なのです。

☆この点については、東京女子学園の辰巳教頭も同じ問題意識でした。実は辰巳教頭も「The授業リンク」の会のメンバーで、今回お会いすることができました。「英語科の授業でDSを導入したことが、世界平和につながるというのは、教員にとっては、少し大げさな言い方かもしれないけれど、そうなることはウェルカム。うちの英語の先生方も、東京女子学園の英語の授業の中に世界平和の心があるのは事実よねと言ってますからね」と。

☆それにしても、DSの学習ソフトは山ほどありますね。山川の日本史や世界史の教科書で学べるソフト、TOEICや英検の学習ソフト、漢検のソフト、インド数学のソフト・・・。要するに学習指導要領の思考のレベルに相当するものは、今後すべて出回るのです。

☆学習指導要領は思考のレベルは3までというのがほとんど。つまり、情報を確認するレベル1、情報を整理するレベル2、情報を分類・照合するレベル3までということですね。

☆OECD/PISAは、さらに論理的思考というレベル4、批判的思考レベル5まで要求しています。中学入試の問題は、さらにさらに創造的思考というレベル6まで要求しています。

* 参照①)→学習指導要領を世界標準に

* 参照②)→PISA3側面とレベル

☆レベル3までは、学習ソフトとしてはツリー構造の知識でデザインできるので、作りやすいのです。しかし、レベル4以上は、正解がないオープンエンドな無限のネットワーク構造のデザインになるので、プログラムがあまりに多次元になりまだまだ技術がおいつきません。ここはやはり対話や議論の授業でしかできないでしょう。

☆となると、東京女子学園の次なる戦略が見えてきますね。レベル3までの文科省御用達の知識は、DSで生徒個々人が学び、授業ではどの教科でも批判的思考や創造的思考というレベル5や6までの考え・発信し合う授業に成長していくということですね。

☆21世紀型授業の総合学習の撤退を、文科省が判断したのは、もともとレベル3までしか想定していない学習指導要領では、無理だったということに過ぎません。総合学習は、レベル5・6のトレーニングの場なのですが、それをレベル3に合わせてやるという「プロクルステスのベッド」方式だったのですから、破綻するのは当然だったのです。文科省は驚いたでしょうね、なんとしっかり表現と思想の自由を規制したということに気づいてしまったのですから。PISA型の全国学力テストを実施していながら、「レベル」の話題はタブーなのはそういうわけなのです。

☆ここまでくると、≪私学の系譜≫の直系實吉理事長・校長のねらいが見え隠れしてきましたね。教科専門知識はDSで効率よく合理的に行い、教科すべての基礎学問であるレベル5・6の思考力は授業で徹底する。基礎というと文科省では、基礎基本で「易しいこと」とイコールで、ねじれていますが、實吉先生にとっては、教養であり人類普遍の原理です。そしてこの知が横断知、あるいは学際知です。

*≪私学の系譜≫直系とは、「江原素六―内村鑑三―南原繁ー氷上信廣」という戦後教育基本法の精神のハビトゥスを形成してきた麻布学園の文化遺伝子を継承しているということ。

☆麻布の氷上校長は、「新しい教養を!」とソクラテス型講座を開設していますが、氷上校長と同窓の實吉理事長・校長が、東京女子学園流儀のリベラルアーツを確固たるものとしようというのは、≪私学の系譜≫論から言えば、論理必然です

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