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The 授業リンク@考[02]教育の壁をいかにして超えるか

☆昨夜(2008年7月3日)共立女子中学で、第2回「Ths授業リンク」の会が開催されました。講師は、同校の池末和幸先生。テーマは< 「カードゲームを用いた国際理解」― 「参加体験型」で授業を活性化 ― >でした。前回予告したとおり、池末先生はなかなかスリリングなプログラムを実行しました。現在の日本の教育の壁を参加者の目の前に映し出し、実感させたのです。

教育の壁について、もともと教員の問題意識は高いようです。たとえば、「教員免許:更新講習で教員の要望 生徒の心「教えて」--山形大学調査 /山形(6月5日13時2分配信 毎日新聞)」によると、

Photo 来年度始まる教員免許更新制度の導入を前に、山形大学教員養成機構運営委員会(渡辺誠一座長)が、更新に必要な講習内容の希望を教員に調査したところ、カウンセリングやいじめ・不登校への対処など「生徒の心理・生徒指導」に関する講習を望む教員が最も多かった。渡辺教授は「現場の教師が直面する問題が浮き彫りになった」と指摘している。・・・全体の4割・427人と最も多くの教員からの要望が「生徒の心理、生徒指導」。・・・免許更新制度導入の文部科学省の狙いは、専門的な教科の知識を最新のものに更新させ、教員に自信を持たせることだった。しかし文科省の想定を裏切る形で、専門知識の向上を図る「教科専門」に関する講習への要望は、156人と全体の1割弱にとどまった。

☆今回の池末先生の「カードゲームを用いた国際理解」のプログラムも、国際理解教育の知識を教える社会科としての専門的なスキルを提案するものではなく、生徒たち1人ひとりの気づきを想起するソクラテス型プログラムでした。そういう意味では問題意識は山形大学の調査と一見重なります。

☆しかし、池末先生のプログラムの重要性は、「生徒の心理・生徒指導」のプロセスや方法論にのみあるのではありません。アイスブレイキングと称して少しご自分の体験を話されましたが、そこにこそ重要な端緒があったのです。

☆プロセスや方法論がどんなに優れていても、出発点が違えば、その成果も違います。純粋理性から出発するのか、純粋欲望から出発するのかでカントとサドの違いが生まれてくるのです。論理的な思考も、出発点となる価値観が違えば、結果は自ずと違うわけです。その出発点とは何か?

☆それが東浩紀さんの「動物化するポストモダン」や平野啓一郎さんの「決壊」が共有する人間の問題です。ハワード・ガードナー教授の「5つの精神」という物語・価値観を喪失する人間の出現ですね。

☆池末先生のプロフィールを見ると、先生ご自身がカトリック学校出身で、青年海外協力隊に参加されています。共立女子の前任校は鹿児島純心です。筋金入りというか、人間をどうとらえるのかというのは、当り前のことになっていると思います。

☆第1回めの「The授業リンク」の講師は松田先生でしたが、両者の先生のプログラムの共通点は、自分の授業の公開でありながら、決して自己満足的な自分ヒストリーを語るのではなく、普遍性があるということです。

☆多くの教師は、プロセスや方法論について、いろいろな手法を取り入れていますから、一見普遍的なのですが、生徒に対する問題意識が、東さんや平野さん、ガードナー教授と共有されていない限り、普遍性はありません。

☆普遍性は抽象的だし難しいから、そんなの関係ない、もっとわかりやすい汎用性の高い方法論を学びたいという一見勤勉な教師の姿勢が教育の壁なのかもしれません。もっとも、にもかかわらず、このような学びを教師が起こすことは、日本の教育において格段の進歩でもあるのです・・・。

☆「The授業リンク」の会長川合正先生から、この会のメンバーも執筆している(川合先生ご自身の論文も掲載されています)著書「自分とも友達ともポジティブ・コミュニケーション~かかわりをトレーニングするワーク&ワークシート」(ほんの森出版2008年)をいただきました。

☆この本を帰り道電車の中で読みながら、川合先生は絶妙のタイミングをセットされたなぁと感じました。「The授業リンク」が越えなければならない教育の壁が投影されていたからです。川合先生の論考の出発点も、常に今の子どもたちの情況に対する危機感の共有から始まっています。だからこそポジティブ・コミュニケーションの探究なのです。

☆しかし、もしこの危機感の共有がなく、効率の良い葛藤のないコミュニケーションのトレーニングのための効果的方法論として活用するだけなら、ポジティブ・コミュニケーションは、実はネガティブ・コミュニケーションになってしまうよという警鐘の本だったのです。

☆池末先生の講演終了後、松田先生(明大明治)や次回の講師梅沢先生(中村中)とも少し対話ができましたが、改めて東浩紀さんや平野啓一郎さんの問題意識をシェアしていることを感じました。生徒のおかれた環境や心的問題、そして社会の問題を生徒とともに考え、いかにしてチェンジしていけるのか。それを社会や数学、理科の授業を通してダイナミックに実践しようと。私はエールを贈ることしかできないのですが・・・。

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