The 授業リンク@考[04]教育の壁をいかにして超えるか ③
☆第2回「Ths授業リンク」の会(2008年7月3日)で行われた池末先生の授業について、国際教育研究家の岡部憲治さん(写真:白梅学園清修の特別授業で)の丁寧な分析がたいへん参考になります。OECD/PISAの世界標準のモノサシをあてているので、池末先生の今回の授業方法によって、生徒がどういう思考を、どこまでするのか、一つの仮説を立てられます。
☆授業方法のメインであった「カードゲーム」自体は、岡部さんの言うように、PISAの読解リテラシーでいう3つのプロセス「情報の確認」・「テキストの解釈」・「熟考・評価」のうち、「情報の確認」・「テキストの解釈」が中心だったと思います。
☆そして、生徒たちはどこまで考えるのかというと、岡部さんはあえて、述べていませんが、レベル3までです。カードゲームは回答がきちんとでるようになっているからです。しかし、池末先生は授業の中でこの「カードゲーム」をやって終わりにはしないでしょう。
☆岡部さんは、こう述べています。
地球規模の自然現象を身近なものにおきかえて再現・説明するようなテレビ番組や本はけっこうある。が、社会の状態を捉えて身近なものに置きかえ体感させようというのは意外と少ない。そういう意味ではとても効果的な手法だ。
☆「カードゲーム」におけるルールが違うとコミュニケーションができないという体感が、異文化理解や国際社会での合意形成のモデルを再現・説明する置き換えモデルあるいはレトリックだったんだという気づきを生徒たちに議論させたとしたらどうでしょう。
☆思考のプロセスは、「熟考・評価」にまで広がるし、レベルは5にも6にも深まりますね。ここまで来ると、池末先生ご自身も、私も同じように意識している東浩紀さんの「動物化するポストモダン」や平野啓一郎さんの「決壊」が共有する人間の問題と「カードゲーム」が結びつきます。
☆ハワード・ガードナー教授の「5つの精神」という物語・価値観を喪失してしまった人間の問題性ですね。ルールの背景にあるものです。「カードゲーム」ではルールの違いに気づくだけではなく、ルールの合意形成を一瞬ですがするシーンがあります。スーッと過ぎてしまうので、気づきにくいのですが、その合意形成はいかにして可能なのか?
☆このとき、合意形成の暴力的な方法に紛争・戦争が出てくることがあります。今回の「カードゲーム」には、3つのプロセスとレベル6まで考える可能性を含んだ仕掛けがあるわけです。時間が短かったので、2つのプロセスとレベル3までしか十分には体験できなかったわけですが、プロセスの広がりと、レベルの深まりの端子はきちんとセットされていたと思います。
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